e奨学金返済の減免 若い世代の地方定住に必要

  • 2015.02.12
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年2月12日(木)付




地域の将来を担う若者の育成に積極的に取り組んでいきたい。


政府と地方自治体、地域の産業界は2015年度から、地方に就職する学生の奨学金返済額を減らす制度を始める。自治体や産業界が共同で基金をつくり、卒業後の返済を一定の割合で肩代わりする。政府は、きょう国会に提出する15年度予算案で交付税を手当てし、基金を支援する方針だ。


地方の活力維持には、人材の東京一極集中を改めることが欠かせない。大学入学や就職のタイミングで東京に移り住む若者は多く、政府の対応に地方からは歓迎の声が上がっている。


類似の取り組みは、既に香川県など、いくつかの自治体で行われている。12年度から始まった香川県の制度では、対象者に月額3万~6万円程度の無利子奨学金を貸与。卒業後、同県内で就職した場合は、借りた月数に1万5000円を掛けた金額の返済を肩代わりする。


制度に対する利用者の評価は高く、初年度は募集定員の10倍近い応募があった。他の自治体でも同様の仕組みを実施すれば、若い世代を呼び込むことができるはずだ。


政府はこの新しい奨学金事業で、事業に取り組む1道府県あたり100人程度を対象として想定しており、数千人規模での地方定住を促す考えだ。


制度の対象となる学生の専攻分野や産業種別、人数、支援する金額は今後、自治体と地元の産業界が協議して決める。地方での定住を望む若者の希望を可能な限りかなえられるよう、自治体や産業界には、幅広い分野の学生を対象にした制度とすることを期待したい。


総務省によると、東京圏では14年、転入者が転出者を上回る転入超過が約11万人に達した。政府は、こうした現状を改め、20年までに東京圏の転出・転入者を同程度にする目標も掲げている。新奨学金事業は、公明党の「活気ある温かな地域づくり推進本部」が、重点分野に掲げる政策の一つでもある。


地方への若者の定住を本格化させる一つのきっかけとして、全国の地方議会で事業の実施を議論してもらいたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ