e緊急事態管理庁 複合災害への対応に万全期せ

  • 2015.02.12
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年2月11日(水)付




大地震や津波、原発事故など、同時複合的な災害が発生した場合、現行の危機管理体制で十分か。政府は現在、複合災害に一元的に対応する「緊急事態管理庁(仮称)」の創設について検討を進めている。3月末をめどに結論を出す方針だ。


同管理庁は、自衛隊や海上保安庁、警察、消防などを動員できる権限を持たせて縦割り行政を排し、迅速に対応で
きるようにするのが狙い。平時にあっても、救助・復旧に関する研究や、機材の開発、訓練などを総合的に行う。省庁や自治体の枠を超えて大災害に対応する米国の専門機関「連邦危機管理庁(FEMA)」を参考にしたものだ。想定される首都直下地震などに備えて、早期創設を実現してほしい。


東日本大震災では地震、津波、原発事故の被害が広範囲で起き、省庁の縦割り行政や連携不足による対応の遅れが
指摘された。例えば、海上保安庁と海上自衛隊は、手術台や病床などの機能を持った船を複数隻保有していたが、大震災では縦割り行政の壁と民主党政権の非力が重なり、これらの船は物資輸送で使われただけだった。また、大震災直後、岩手県の花巻空港に全国から多くの災害派遣医療チーム(DMAT)の隊員が到着したが、移動手段や指示がなく、何もできずに帰ったチームもあったという。災害医療体制を強化する上でも創設を検討するべきである。


大規模災害時は、指揮命令系統の一元化が重要となる。被災現場では、医師や看護師が同乗するドクターヘリや、
消防、海上保安庁、自衛隊のヘリなど多数派遣される。任務はそれぞれ異なるが、相互に無駄がないよう調整する必要がある。


現在の危機管理体制は、内閣危機管理監の下、内閣官房や内閣府の担当が調整に当たっている。ただ、内閣府の防
災担当の職員の多くは、2年程度で交代するため、専門性が組織として蓄積されにくい。一元的な組織ができれば、災害に関する情報や経験の蓄積にもつながるだろう。


国家の緊急事態に当たっては、政府全体として総合力を発揮して対処することが求められる。複合災害への対応に
万全を期してもらいたい。

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