e火山災害対策 専門家の確保と育成も必要

  • 2015.01.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年1月27日(火)付




戦後最悪の火山災害となった昨年9月の御嶽山(長野・岐阜県境)噴火を受けて、政府が防災態勢を強化する。災害対策の柱となる活火山法改正案を今国会に提出する方針だ。


同改正案は、常時観測の対象とする50の火山周辺の宿泊施設に客の避難計画作成を義務付ける。この点については、気象庁や地元自治体、防災専門家、警察で組織する「火山防災協議会」の設置も義務化する必要があるだろう。住民との迅速な情報共有は、安全確保に欠かせない。


不測の事態に備えるため、今国会冒頭で審議される今年度の補正予算案に火山災害対策費として、計約88億円が盛り込まれている。御嶽山の噴火災害は、気象庁が噴火の兆候となる火山性地震を事前に観測していたが、噴火の直接確認に必要な火口付近の観測装置がなかったため、登山客の立ち入りを規制できなかった。これを受け、気象庁はマグマによる磁気変化で地下の温度上昇を把握する観測装置の設置や監視カメラの増設を含め火口付近の防災設備を拡充する。全国的な火山活動の活発化が懸念されているさなかだ。補正予算を早期成立させ、対策の実施を急ぐ必要がある。


一方で気掛かりなのが、火山対策を担う現職の専門家の圧倒的な不足だ。大学で火山の観測・調査研究にあたる研究者は40人程度しかいない。自治体などの火山防災対策を支援する気象庁の火山防災官約30人のうち、4分の1は庁内の火山業務の経験がなく、火山業務を担う職員の大半も専門的に学んだ経験がないという。


火山の噴火対策に関して、周辺住民の間には「災害にどのように備え、対応すべきか専門家に判断してもらいたい」との要望がある。地域の事情まで踏まえた防災行動を考えられる専門家が極めて限られたままでは、災害対策として心もとない。


中央防災会議の専門部会では、出席委員から気象庁に対して、博士研究員や大学OBなど火山専門家の積極的な登用を求める意見が出た。的を射た指摘である。


政府は、当面の対策とともに、長期的な視点に立った人材育成の在り方も早急に検討してもらいたい。

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