e海のごみ 食の安全へ回収・処理進めよ

  • 2015.01.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年1月21日(水)付



環境省は2015年度から、日本近海を漂うごみの回収を支援する事業に乗り出す。沿岸部の自治体に、底引き網漁船を稼働させるなどの方法で海面や海底のごみを回収してもらい、国がその費用の8割以上を補助する。14年度補正予算案と15年度予算案に計28.5億円を計上した。同事業を着実に実施し、海の環境改善に取り組んでほしい。


海のごみは、海岸に流れ着いた「漂着ごみ」、海底に蓄積する「海底ごみ」、海面や海中を浮遊する「漂流ごみ」に分けられる。


漂着ごみは、公明党が制定をリードした海岸漂着物処理推進法(議員立法)に基づき、海岸を管理する自治体に回収・処理費用の補助を行っている。しかし、漂流ごみや海底ごみはこれまで、責任の所在が特定しづらいため、自治体が必要に応じて自前で回収してきた。今回、予算措置で漂流・海底ごみも補助対象にしたことは前進である。


食の安全を守るためにも海のごみ対策は重要だ。漂流するプラスチックごみは、紫外線や波の衝撃などで徐々に小さく砕け、これらが魚介類の体内に取り込まれる可能性が高いと指摘されている。プラスチックは、海中にある汚染物質を吸着しやすいといわれており、海を漂うごみを回収しなければ、魚介類や、それを食べる人間の健康に悪影響を及ぼす。


また、海中のごみで船体が破損するケースもある。漁業の安全の観点からも回収を進めなければならない。


環境省によると、漂着ごみは年間25万~30万トンに上り、発泡スチロールやプラスチックの破片などが多いという。海岸は足場が悪い岩場が多く、回収に手間がかかる。海を漂うごみを減らせば、結果的に海岸に流れ着くごみの削減にもつながるはずだ。


一方、国境を越えた対策も欠かせない。漂流ごみの中には、近隣国から流れ出したごみや、逆に日本近海で漂流していたごみがハワイや米国本土まで流れ出てしまうことがある。環境省は来年度から、海のごみ全般について中国、韓国と調査データの共有化などを進めるという。


政府は、海にごみを出さないよう国内外に呼び掛け、海洋汚染を防いでもらいたい。

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