eコラム「北斗七星」

  • 2015.01.19
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年1月19日(月)付




旅館の大浴場で、教え子を連れ銭湯に行った教師の話を思い出したらしい。「こどもだけではない。大人も銭湯の味を忘れようとしている」。外山滋比古さんが『頭の旅』(毎日新聞社)で嘆いている◆確かに一人住まいのころ、よく近所の銭湯に通ったものだ。だが、ここ二十数年、遠ざかっている。銭湯は昨年、全国で3036軒。ピーク時の5分の1以下に。そんな銭湯で、新たな動きが始まっていると聞いた。外国人観光客を呼び込む戦略を展開しているのだ◆東京都浴場組合は4カ国語で銭湯の歴史など記したパンフレット・SENTOをホームページに載せた。大阪では、銭湯の運営会社が人気漫画の主人公に扮した外国人による解説動画を投稿サイトに掲載。優良企業を表彰する米国スティービー賞のサービス部門金賞に輝いた◆世界経済フォーラムが2年ごとに発表する「旅行・観光競争力ランキング」(2013年版)によれば、日本は140の国・地域中14位と、過去最高位に。アジアではシンガポールに次ぐ順位だ。訪日外国人数も昨年、1300万人を超えた◆20年に政府目標の訪日外国人2000万人を達成すれば、経済効果は4.1兆円にもなるという。「銭湯は日本の伝統文化」(SENTO)と位置付け売り出す時代である。業界に限らず、各地方も一層の工夫が必要だろう。(田)

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