eコラム「北斗七星」

  • 2015.01.13
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年1月10日(土)付




赤茶けて鉄骨だけとなった建物が、今も大津波の脅威を物語る宮城県南三陸町の防災対策庁舎。その県有化を検討するため、今月中に県が同町と協議することを村井嘉浩知事が先日、明らかにした。これには、町も応じるという◆「祈りを捧げる場として残して」「つらい記憶がよみがえる」。防災対策庁舎を巡って町民の意見は二分。保存に反対する遺族の声を踏まえ、町が解体を表明した一方、震災遺構を検討する県の有識者会議が発足し、保存の価値があると結論付けた。県有化の期間は20年とされる◆かつて、広島市の原爆ドームも保存か解体かで意見が分かれた。原爆投下から21年後、同市議会が永久保存を決議。ユネスコの世界遺産にも登録された。保存への流れを作ったのは、被爆によって16歳で生涯を閉じた楮山ヒロ子さんが、つづった日記と、それに感銘を受けた子どもの団体「広島折鶴の会」の運動だった◆宮城県女川町では、女川第一中学校(現女川中)の生徒たちが「後世に教訓を伝えたい」とアンケートを行い、津波で倒壊したビルの保存を町に要望。募金活動も繰り広げ、「いのちの石碑」を建立した◆石碑に輝く「千年後の命を守るために」の文字。そこには「3.11を直視し、前へ進もう」(『命みつめて』鳳書院)との子どもたちの思いが刻まれている。(川)

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