e武器貿易条約が発効 移転規制強化 日本が範を示せ

  • 2014.12.25
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年12月25日(木)付



拳銃などの小型武器や戦車、戦闘機、ミサイルをはじめとする通常兵器の使用によって、世界で年間70万人以上が死亡し、負傷者はその約10倍にも及ぶといわれている。まさに「事実上の大量破壊兵器」とも呼ばれる通常兵器の輸出入や仲介取引などの移転を規制する武器貿易条約(ATT)が24日、発効した。


さまざまな通常兵器の移転を包括的に規制する国際条約はこれまでなかったため、画期的な条約であるといえよう。


ATTが昨年4月に国連総会で採択されて以降、批准国は順調に増え、今年9月には発効要件である50カ国に達した。日本も今年5月に批准している。現在、批准国は60カ国に及ぶ(署名は130カ国)。


ATTは、通常兵器が使われることで民間人が大量に殺害されるなど、国際人道法および人権法の重大な違反につながる場合、移転を禁じている。つまり、「人道・人権」という要素が、移転を許可するかどうかの重要な判断基準の一つになっている。


世界の武器輸出国上位10カ国のうちドイツ、フランス、英国、スペイン、イタリアの5カ国もATTを批准済みで、国際人道法および人権法を侵害している当事者に対しては、通常兵器の移転をしないようにする厳しい基準に従うことを約束している。


日本は防衛装備移転三原則の下、武器の輸出管理を厳格に行っている。ATTを批准した国が、自国の通常兵器の移転規制のルールを整備する際、日本が参考になるだろう。


また、ATTの規制対象ではないが、日本の企業が開発した民生用の技術は、兵器に転用できるものも少なくない。自社が開発した技術が兵器開発に使われないか心配している企業もあるが、技術をどの相手に移転してはいけないのかを企業だけで判断するのは難しい。例えば、経済産業省が作成した大量破壊兵器の開発に携わる者を列挙した「外国ユーザーリスト」の通常兵器版があれば、企業も助かるのではないか。


武器の輸出について厳しい姿勢を貫いてきた日本が範を示し、国際的な通常兵器の移転規制体制の強化に貢献していきたい。

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