e軽減税率は必要

  • 2014.12.03
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年12月3日(水)付



低所得者の生活を守れ
中央大学教授 長谷川 聰哲氏



10%への引き上げと同時に
―消費税の軽減税率をどう考えますか。

長谷川 低所得者の生活を守るため、導入する必要がある。2017年4月に延期された消費税率10%への引き上げと同時に実現すべきだ。

消費税率の引き上げは、国の財政再建と社会保障の維持・充実を両立する上で避けられない。一方で消費税には、低所得者の負担が相対的に重くなる傾向がある。食料品などの税率が、高級品と同じように高い状態では、生活が立ち行かなくなる人が出てくる。

―具体的には。

長谷川 総務省が09年に調査した結果によると、年収が174万円以下の世帯は、毎月の収入よりも食料品や日用雑貨などを買う「基礎的支出」の金額が大きく、赤字になっている。中でも、食料品の購入費は支出全体の約3割を占める。

生きていく上で不可欠な基礎的支出は、大きく切り詰められない。調査時の消費税率は5%だったが、10%まで引き上げられたら、低所得者は、最低限の生活すら維持できない。

―事業者の事務負担増加が懸念されていますが。

長谷川 スーパーマーケット事業者などは、レジを通すごとに販売情報を記録する「POSシステム」を使っているので、少しプログラムを変えれば対応できる。小規模事業者にとっても、取り扱う商品数は多くないので、請求書と帳簿を活用した、現行の仕入税額控除方式で手間はさほど掛からないだろう。

ただし、対象品目の周知や対応するまでの期間は必要だ。衆院選が終わったら、すぐ導入に向けた準備を始めなければならない。それは、軽減税率を公約に掲げる政党の責任だ。

―軽減税率が実現するまで、当面の低所得者対策はどうすべきですか。

長谷川 短期的には基礎的支出を賄えない人に対して、十分な不正受給対策をした上で、現金を給付することも、必要だと思う。しかし、国の予算状況によって毎年の給付額が変わる可能性もある。

中長期的には、税制の中で低所得者対策を完結できる軽減税率しかないのではないか。

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