e結党50年対談 公明が日本政治の座標軸に

  • 2014.11.10
  • 情勢/社会
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公明新聞:2014年11月9日(日)付



地に足が着いた平和主義に信頼 田原
合意形成の政治 さらに進める 山口
原点は戦争体験



11月17日に、公明党は結党50年を迎えます。そこで長年、日本の政治と向き合ってきたジャーナリストの田原総一朗氏と公明党の山口那津男代表が、山積する政治課題、連立政権下における公明党の役割などについて大いに語り合いました。さあ、真剣トーク"一本勝負"のスタートです。

山口 メディアの第一線で精力的に評論活動を続けておられる田原さんですが、ジャーナリストとしてご自身を駆り立てる原動力、原点は何ですか。

田原 基本は好奇心です。僕は人が好きでね。もっと言えば、小学5年生の夏に経験した日本の敗戦、これが原点です。1学期まで教師は皆「この戦争は聖戦だ」と言っていたのに、終戦を機に価値観が百八十度変わってしまった。それで「もっともらしいことを言う人は信用できない」と深く心に刻まれました。これがジャーナリストになった動機だと思います。

山口 公明党は11月17日で結党50年を迎えます。公明党の半世紀を、どうご覧になっていますか。

田原 公明党が最も優れているのは、地に足の着いた平和主義という点です。日本には"平和主義"を標榜する政党がいくつかあるけれども、多くは地に足が着いていません。ただ単に平和を叫んでいるだけです。例えば、新しい安全保障法制整備の基本方針を定めた7月の閣議決定も、野党の多くは反対を叫ぶばかりで対案がありませんでした。その点、公明党はよく頑張ったと大変評価しています。

山口 ありがとうございます。特に注目したのはどのような点ですか。

田原 憲法9条の平和主義の精神をいかに守るかという点で、自民党と粘り強く協議を進めました。そして守り抜いた。閣議決定の全文を何度読んでも、集団的自衛権の行使を認めたというより、個別的自衛権を延長したものだと読めます。7月半ばに開かれた衆参両院の予算委員会で内閣法制局長官が、平和憲法の基本原則である「自国防衛の基本は維持している」という趣旨の答弁をしましたが、全くその通りです。

山口 今後の法整備においては、閣議決定や予算委員会での政府答弁を忠実に反映し、平和国家としての歩みを堅持してまいります。ところで、田原さんは現在の政治状況をどう捉えていますか。
二項対立を超えて

田原 先ほどの安全保障の議論もそうでしたが、例えば原発の問題にしても、「賛成」と「反対」に意見がはっきり分かれたままで、議論そのものが成り立たなくなってしまっています。この二項対立では駄目です。政治は前へ進みません。

山口 公明党が誕生した理由もそこにあります。1964年当時、自民党は大企業、社会党は労働組合をバックに、二元的なイデオロギー(思想)対立が強くありました。しかし、その間にあって忘れ去られた人々がいました。中小・小規模企業で汗まみれになって働く庶民です。その声を受け止めようとしたのが公明党の出発点です。何かを議論しようとすると二項対立、二元論に陥りがちですが、両方の価値の重要な点を見極めながら、国民の大方が納得できる合意形成を進めるのが公明党の役目だと思っています。

田原 今の政治状況は"一強多弱"。民主党や維新の党が何を言おうが、全く政治に響いてこない。公明党の役割は非常に重要だと思います。

山口 国会議員数で言えば、公明党は自民党の約8分1です。その中で、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」を座標軸に据え、政治における安定と合意形成、そして現実的な対応をめざしています。また、公明党には地方議会から出発した草の根のネットワークがあります。

田原 連立政権において、公明党は歯止めの役割を結構果たせていると思います。それに、地方に基盤を持つ点は、一つの強みです。

山口 政治には国民のニーズが何なのかを的確に捉える力が必要です。公明党の市区町村と都道府県、国を縦横に結ぶネットワークの力は非常に強固です。今後も、この特徴を生かしていきたいと思います。
女性が輝くために

田原 政府は、女性が活躍できる社会をめざして取り組みを進めています。この点に関して公明党はどのように考えていますか。

山口 公明党はかねてから、女性の活躍を訴え続けてきました。少子高齢化が進む今、男性だけでは家庭や地域、そして企業も成り立ちません。女性のきめ細かな視点があらゆる分野で必要とされています。その点、約3000人いる公明議員の3割は女性です。

田原 3割ですか。政府は2020年までに指導的地位の女性の割合を3割に引き上げる目標を掲げていますが、既に達成していますね。僕は、少子化が日本の非常に重大な問題だと捉えています。女性が一生の間に出産する子どもの数を示す出生率は2013年の値で1.43と低水準です。解決への道筋はありますか。

山口 個人的な話で恐縮ですが、私の祖母は教員をしており、赤ん坊をおぶって登校し、授業中はかごに入れて子育てしていたそうです。

田原 それはすごい。

山口 そこには、相当な努力と工夫に加えて、大きな犠牲があったかもしれません。女性が仕事を辞めないで済む環境、子どもを出産しても育てながら仕事を続けられる社会を整える必要があります。

田原 最近、最高裁が、妊娠を理由に女性を降格させたのは「原則違法」との判断を示しました。いわゆる「マタニティー・ハラスメント」の問題ですが、僕は最高裁の段階になってやっと認められたのかと驚いています。

山口 女性は出産のために一時は職場を離れる必要があるかもしれませんが、それを補うための費用やアウトソーシング(外部委託)の取り組みを支援したり、女性の活躍を後押しする職場の雰囲気をつくり出すような施策を進めます。
大衆に根差す公明党に魅力

国民政党への飛躍を期待 田原
議員が力磨き政党力アップ 山口

田原 一般大衆に根差した公明党は、とても魅力のある政党だと思います。明らかに自民党より左。そして社民党よりは右。つまり現実性があります。国民政党としてさらなる飛躍を期待していますが、一方で、いかに支持を広げるかが今後の課題だと感じています。

山口 議員一人一人が現場力や政策力を磨き、実績を生み出す政党力を高める必要があります。また、国民の皆さまに説明するアピール力も高めたいと思います。ただ、政党として基礎になる部分は、庶民の気持ちや、国民の悩みをきちんとキャッチする能力ですので「大衆とともに」の立党精神を体現する中で信頼を重ねてまいります。

田原 今、新聞をはじめ日本のマスコミは、最初から結論ありきの報道で賛成・反対を叫ぶキャンペーン式です。政党もそうです。私は、この風潮を打破したいと思っています。自分の意見を主張するだけでは何も生まれません。その点、日本で唯一キャンペーン式ではない政党が公明党です。現実を見据えながら結論を出しています。その特徴をもっと発揮してほしいと思います。

山口 ありがとうございます。さらに民意をつかむ感度を高めながら、日本の政治を前に進めてまいります。

<田原総一朗氏プロフィル>たはら・そういちろう 1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。テレビ局勤務を経て77年にフリーに。政治や経済の問題に対し、活字と放送分野で評論活動を続ける。98年、戦後の放送ジャーナリスト一人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義するほか、「大隈塾」塾頭も務める。『日本の戦争』(小学館)など著書多数。

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