e景気対策 家計や中小企業に焦点当てよ

  • 2014.11.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年11月5日(水)付



連休明け4日の東京株式市場は、ほぼ7年ぶりとなる一時1万7000円台に乗せた。日本銀行の量的・質的金融緩和の拡大を好感した投資家が、先週末に引き続き幅広い銘柄を買ったためだ。

日銀の電撃的な追加緩和を市場は歓迎しているが、株価の大幅な上昇を手放しで喜ぶわけにはいかない。日銀が供給する資金が企業の設備投資や賃上げ、雇用拡大に着実に結びつかないと実体経済を下支えできず、デフレからの脱却も遅れてしまう。

気がかりなのは、為替相場だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和政策の終了を決めたため、日米の金利差が広がり円安ドル高の動きはますます加速していくだろう。

事実、4日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=114円台と、約6年10カ月ぶりの安値をつけた。過度で急速な円安の進行は、日本経済にさまざまな副作用を及ぼす。政府は市場の急激な変動に対して、これまで以上にきめ細かな目配りと機敏な対応を怠らないようにしてほしい。

4月の消費税増税後、駆け込み需要の反動や天候不順で、消費はさえない。賃上げ額を上回る物価の上昇も中小企業や家計に重くのしかかり、特に「所得の低い層が消費を絞っている」(甘利明経済財政担当相)。

物価高やエネルギー高騰に焦点を当てた対策を急がなければならない。具体的には、株価上昇による資産効果の恩恵が望めない若年層への子育てや就労の支援に加え、漁業や農家、寒冷地への燃料費補助など、家計や中小企業に直接働きかけて即効性が期待できる対策を講じるべきではないだろうか。

政府は4日開かれた経済財政諮問会議で景気対策について、本格的な検討に入った。これらの項目について、ぜひ議論を掘り下げてほしい。

黒田東彦・日銀総裁は、15年以上に及ぶデフレからの脱却に向け、日本経済は「正念場にある」と強調した。その認識を政府も共有すべきである。日銀の追加緩和の効果が出ている間に、成長戦略の具体化を急ぐとともに、構造改革や税制を通じて、企業活動の活性化を進め、強い日本経済を築いてほしい。

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