eコラム「北斗七星」

  • 2014.11.04
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年11月1日(土)付



着膨れする季節。通勤電車の座席も窮屈になってくる。そんな座席で思い出すのが映画評論家の故淀川長治さんのエピソード(『名手名言』山川静夫著、文春文庫)。あらましはこうだ◆淀川さんが電車に乗っていると、風体の良くない男が淀川さんの隣が少しあいているのをみつけ割りこんできた。<ガラの悪い男だな>。淀川さんは思うが、見ると男はおしりのほんの先しかのせていない。<悪い人じゃない>と思い直し「もっと奥へ」と言う◆が男は動かない。照れているらしい。淀川さんはまた「もっとお入りなさい」と男の腕を引っ張る。しばらくして男を見ると、男は眼を赤くして「東京に住んできて、こんな親切に言われたことはなかった。おい、握手してくれ」と言う◆男の心根のやさしさを見抜いた淀川さんは「人は見かけで判断してはいけない」と感動し、人を見たらいい人だと思う心を一層強くしたという。そんな淀川さんは本来「金力とか権力におもねることのない、誰に対しても平等なやさしさ」を持っていたと著者は言う◆「多くの政治家と交流し、その姿を見てきたが、地域に根を張り、現場の声を聞いて、親身になって動いてくれるのは公明議員が一番」。本紙に寄せられた元会社経営者の声だ。淀川さんのやさしさに重なるような気がする。(六)

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