e広がるソーシャルビジネス

  • 2014.10.24
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年10月24日(金)付



社会の課題を解決するための事業を展開
起業を後押し、セミナーも 神戸市



事業収益を確保しつつ、介護や環境保護など社会的な課題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」の役割が、ますます重要になってきた。公明党も"活気ある温かな地域づくり"をめざした政策提言で、民間非営利団体(NPO)やソーシャルビジネスの創業・起業支援を訴えている。こうした中、神戸市では、NPO法人などが起業したソーシャルビジネスに対し、公費助成や"啓発セミナー"などを行い、着実に成果を挙げている。=関西支局・塚田慎一、報道部・竹島正人

「チャリティー・ショップを起業するのが、長年の夢だったんです」。神戸市長田区でリサイクル店を営むNPO法人・フリーヘルプの西本精五理事長(65)は、弾む声で語った。西本さんの店では、市民から寄せられたブランドものを含む古着やバッグなどを販売。売り上げた商品1点につき50円を、家庭内暴力(DV)の被害者を支援しているNPO法人の「ウィメンズネット・こうべ」(正井礼子代表理事)に寄付している。

かつて勤務していた会社の出張で英国を訪れた西本さん。「英国ではどの街にもチャリティー・ショップがあり、ソーシャルビジネスとして定着していることに感動した。いつかは、日本にも根付かせたいと思った」と言う。定年後、西本さんは夢の実現に踏み出したが、事業として成り立つか、不安もあった。

その不安の解消に一役買ったのが、13年度にスタートした神戸市の「ソーシャルビジネス推進助成」制度だ。起業した団体に10万円を助成するほか、成功した起業家を招いたセミナーなどを開催する制度。西本さんは13年8月にリサイクル店を開店するに当たり、市の助成を受け宣伝費用に充当した。

その効果もあり、着実に地域に浸透し、今では月2500着を売り上げるまでに。この1年間で160万円を、ウィメンズネット・こうべが運営するDV被害者の相談所「WACCA」に寄付した。「西本さんのおかげで運営できている」と、WACCAの責任者、茂木美知子さんは感謝する。


独自の認証制度


同市では12年度に、ソーシャルビジネスを担うNPO法人や企業の社会的信用性を保証するため、「KOBEソーシャルビジネスマーク認証」も始めている。この認証を受け、大きな成功を収めているのがNPO法人・ママの働き方応援隊(恵夕喜子理事長)の「赤ちゃん先生プロジェクト」だ。

同プロジェクトは母親が乳幼児と共に高齢者施設などを訪問し、一緒に民謡を歌ったりして交流するもの。高齢者は元気になり、乳幼児は人見知りが解消されるなど効果も上がっている。現在、「応援隊」は24の企業から支援を受け14都府県で活動中で、1回の施設訪問に付き、「応援隊」には支援企業から3万円が支払われ、母親には2000円の報酬が入る仕組みだ。また、活動する母親の登録者数は600人を超えている。



中小企業庁 成功モデル講座実施へ


ソーシャルビジネスの全国的な市場規模は、内閣府の試算によると11年度で1.6兆円に上る。08年度の0.7兆円に比べ、3年間で約2.3倍に拡大している。

その組織形態は、株式会社やNPO法人、一般社団法人など、実にさまざま。活動分野も多岐にわたり、かつてメーンを占めていた地域振興や農業活性化だけでなく、近年では都市部での児童・生徒への学習支援や医療サービスの提供、さらには国際協力の分野にまで広がりを見せている。

東日本大震災の被災地で復興支援に汗を流している組織もある。

活動を軌道に乗せるには、事業継続へのビジネスモデルを構築できるかがカギを握る。そのため、経済産業省の担当者は「地元にある起業・創業の相談窓口を積極的に活用してほしい」と呼び掛けている。

また、中小企業庁は15年度予算の概算要求で「地域課題解決ビジネス普及事業」(2億円)を新規に盛り込んだ。ビジネスモデルの評価や融資・支援に関するガイドラインを作成し、普及を急ぐとともに、成功モデルの講座などを各地で実施していく予定だ。

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