eコラム「北斗七星」

  • 2014.10.23
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年10月23日(木)付



平日の午前7時台。住宅地から町中に向かう道路は、通勤利用と通学する子どもを乗せた自動車で渋滞している。一方、同じルートで運行する路線バスの乗客は、朝のラッシュ時でも空席が目立つ◆民間事業者の路線バスだからと行政は関与しない。バス会社も利用者ニーズを考慮せず。ましてや沿線住民は無関心。このままでは途絶しかねない"地域の足"を皆の力で再生させよう――。関係者が互いに協力し奮闘する様子を兵庫県豊岡市で伺った◆サービス向上で負の連鎖を断ち切ろうと、最大680円だった運賃を全区間200円に統一。通勤通学で利用しやすいダイヤに変え、小型車両で地域内を細かく運行する便も設けた。住民代表、バス会社、市職員が沿線760戸を一軒ずつ訪問し、「乗って守りましょう」と直接訴えていった。学校では生徒に「当たり前の選択肢」としてバスへの乗車を呼び掛けた◆熱意の込もった取り組みは、後に数字で現れる。通学利用の高校生はゼロから40人。住民理解も進み、利用者数は目標の92%まで大きく伸ばす。この試み以降も、運賃は元に戻さない方針だという◆成果はバス存続にとどまらない。地域のつながり、活性化にも寄与している。そこに住む人が主体者として関わったところに、活力ある地域づくりのヒントがある。(広)

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