eコラム「北斗七星」

  • 2014.10.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年10月8日(水)付



ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたことは記憶に新しいが、主に「商業ベースに乗りにくい」という理由で市場から姿を消しつつある食べ物がある。"絶滅危機食材"ともいわれ、スローフード協会国際本部が世界で900種ほど、日本でも野菜や果物、魚の加工品など25品目を認定している◆例えばこの時期、札幌市内のスーパーの一角にお目見えする「札幌黄」と呼ばれるタマネギ。肉厚で甘みに富み、明治期以降、長く主力品種の座を守っていたものの、病気に弱いことなどが災いし改良種に取って代わられた◆北海道内では他に、一般的には16列ある実の並びが半分しかない「八列トウモロコシ」、皮が硬く包丁では歯が立たないことにちなんでその名が付いた「まさかりカボチャ」も認定に。「すぐに風味が落ち、流通に向かない」「生産性が低く、数が採れない」ことなどから栽培農家が激減した◆いずれも札幌農学校が導入を手掛け、開拓時代から北の大地で暮らす人たちを支えた作物。こうした食材を効率優先で失ってしまうのは、いかにも惜しい◆食にとっては、その土地でしか味わえない希少性も魅力の一つ。今は、ごくわずかの担い手によって守られている"伝統の味"が輝きを取り戻し、地域を元気にする"種"にも育ってほしい。(武)

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