e廃炉研究拠点の整備 新産業の集積で福島再生を

  • 2014.10.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年10月3日(金)付



東京電力福島第1原発の廃炉に向けた研究拠点「楢葉遠隔技術開発センター」(日本原子力研究開発機構)の建設を、福島再生の大きな推進力としていきたい。

先週、起工式が行われた同センターの設置目的は、原子炉建屋内で作業するロボットの開発などで、本格運用は2016年度からの予定だ。

加えて、同センターには、政府が検討を進める福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想のけん引役も求められている。この構想は、福島県東部の浜通り地域に新産業拠点を築くものである。今年6月に報告書がまとめられ、公明党が強く実現を訴えている。同センターが行う研究は、がんの放射線治療や環境・エネルギーなど幅広い分野への応用が期待されており、雇用創出や被災者の帰還、新住民の移住につながるとみられている。

既に米国では、原子力施設周辺の環境浄化と産業都市化に成功している。

かつてプルトニウムの精製で深刻な放射能汚染が発生したワシントン州ハンフォード地域では、1989年に政府と州が除染推進に方針転換。研究施設の技術力は新産業創出に生かされ、150近いベンチャー企業を輩出した。

また、同州は、福島と同様に農業が盛んだ。このため、施設従業員の教育にも関係した州立大学の教員は、州内で高品質のワインができることを証明し、製造業者らに教育を行った。その結果、81年には数カ所だった醸造所は、原子力施設の周辺などでも建設され、ワイン産業の規模は8000億円程度に拡大。ハンフォード周辺の人口も90年の約9.5万人から20年間で17万人を超すまでに急増した。

米国の例は、事故が起きた原子力施設の周辺地域でも、行政の取り組み次第で産業集積と住民の移住は十分に可能であることを示している。

構想に対する福島県民の期待は強い。6月の報告書では、構想の中期的な目標を6年後の東京五輪に設定すべきだと訴えている。今後の課題は、研究を促す特区の制定や首都圏へのアクセス改善、インフラ整備などだ。一人でも多くの被災者が、将来の展望や計画を持てるよう、政府は取り組んでほしい。

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