eコラム「北斗七星」

  • 2014.10.01
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年10月1日(水)付



「広島の土砂災害では、夢之丞が頑張りましてね」。国内外の災害被災地で支援活動を行うNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」(PWJ、広島県神石高原町)の大西健丞さんから電話をいただいた◆夢之丞とは、PWJが育成した災害救助犬(4歳)だ。以前、本紙で紹介した時は、まだ子犬で、訓練を始めたばかり。どこか、おどおどした小さな雑種だった。本当にレスキュードッグになれるのかなと正直、思った◆子犬は捨て犬だった。動物愛護センターの湿ったコンクリートの床で、"殺処分"の順番を待って震えていた。処分寸前で大西さんらに救われた子犬は「人に捨てられた犬が人を救う」という夢を託され、夢之丞と名付けられた◆発災直後、夢之丞と"同僚"のハルク(ゴールデンレトリバー)は、PWJのレスキューチームとともに、多くの犠牲者が出た安佐南区八木地区で初めての救助活動を行い、10時間に亘り泥の中で奮闘。残念ながら生存者の救出には至らなかったが、2人の遺体を発見した◆その間、夢之丞は忍耐強く、使命感に燃え、勇敢に活動を続けたという。精悍なシェパード犬も怯えるような過酷な現場である。なんとも頼もしい救助犬に成長したものだ。PWJスタッフの情熱に敬意を表したい。そして、夢之丞くん、よく頑張ったね。(中)

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