e石井政務調査会長報告(要旨)

  • 2014.09.22
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年9月22日(月)付



人口減少、超高齢化の克服へ
活力引き出す「地方創生」を



公明党の地方創生、地域づくりの政策提言「"活気ある温かな地域づくり"をめざして」について、そのポイントをご報告させていただきます。

現在、日本は世界に例を見ないスピードで少子高齢化が進んでいます。また、人口減少も進んでいます。

今後も地方から大都市圏への人口移動が続くと仮定した場合、2010年から40年にかけて20代・30代の女性人口が5割以上減少する市区町村が全体の約半数896あり、消滅可能性都市であるとの指摘があります。そのうち、40年時点で人口が1万人を切る523の小規模自治体は、特に深刻な状況となります。そうした中で、日本の社会の活力をどのように維持、そして向上させていくことができるのかが問われる時代に入っていると言えます。そのカギを握る存在として、女性と若者の活躍に期待が集まっています。そして老いも若きも社会が一丸となって力を合わせ、地域を活性化し、地域経済を盛り上げていかなくてはなりません。

全国の各地域が人口減少・超高齢化の問題に直面している今、地方の潜在力を引き出す「地方創生」が国政の最重要課題の一つになっています。そこで、公明党の地方創生、地域づくりに対する考え方を示すため、7月初めに素案を提示し、それに対し、7月から8月にかけて全国の都道府県本部政策局長など地方議員の皆さまと意見交換を行いました。そこで寄せられたさまざまな意見を踏まえ、この提言をまとめさせていただきました。



政策提言

提言の柱には、高齢者をはじめとして住民が元気に安心して暮らせ、女性や若者が大きく活躍できる社会をめざして、(1)支え合う地域づくり(2)魅力ある地域づくり(3)安心な地域づくり(4)活力ある地域づくり―の四つの「地域づくり」の柱を掲げました。

今後、各地域において、それぞれの特色や実情に応じた政策立案の参考にしていただければと考えています。また、今後の国会論戦や政府における検討状況等を踏まえ、さらに内容を磨き上げて、来春の統一地方選挙の重点政策に反映させていく予定にしております。

(1)支え合う地域づくり

地域づくりの一つ目の柱である「支え合う地域づくり」は、高齢者が住み慣れた地域で医療・介護・生活支援などのサービスを一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の構築が最大のポイントになっています。

地域包括ケアシステムの構築のため、消費税増収分を財源として都道府県に基金が創設されました。その基金の医療分と介護分のそれぞれの予算額を十分に確保するとともに、適切な配分と市区町村の現場に即した柔軟な運用に取り組みたいと考えています。

その上で、定期巡回随時対応型訪問介護・看護、複合型サービス、小規模多機能型居宅介護サービス、訪問看護など在宅医療、介護を可能とするサービスの全市区町村での実施を進めるため、人材の確保に力を入れてまいります。

また、認知症対策の強化も緊急課題と言えます。認知症高齢者が行方不明になったり、交通事故に巻き込まれるなど、その深刻さは日に日に増しています。そのため、認知症が疑われる早期の段階から家庭訪問を行い、認知症の早期発見や患者の家族支援を行う「認知症初期集中支援チーム」を全市区町村に設置するとともに、認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域でできる範囲で手助けをする「認知症サポーター」の養成などにも取り組みます。

地域包括ケアシステムの構築の中で、特に重要な課題は介護職の人材確保です。

2025年には100万人不足するという予測も示されています。公明党の推進で介護職員処遇改善加算の創設などが行われましたが、まだ十分とは言えません。さらに処遇改善に取り組んでまいります。各地域においても、有償ボランティアの活用やソーシャルビジネスの積極的な取り組みが大切になってきます。介護予防も重要です。元気な高齢者による介護支援のボランティア活動にポイントを付与し、介護予防につなげるボランティアポイント制度などの活用を進めてまいります。

支え合う地域づくりのために、生活自立支援の充実にも取り組んでいきたいと考えております。来年4月に始まる生活困窮者自立支援制度の着実な実施によって、生活保護に至る前の相談支援や就労支援を充実させます。

障がい者等への支援については、障害者総合支援法が施行され、制度の谷間のない支援を提供する新たな障がい保健福祉施策が始まっています。

市区町村の現場において障がい者等へのきめ細かな支援を強化したいと考えております。

(2)魅力ある地域づくり

地域づくりの二つ目の柱である「魅力ある地域づくり」は、人口減少・超高齢社会への対応が大きなポイントになっています。まず、Uターン、Iターン、Jターンなど地域人材の還流を促進してまいります。そのために、東京のハローワークと地方のUIJターン窓口をつなぐ全国ネットワークを構築し、地方合同就職面接会や地方人材還流支援相談会などを通して、効果的な就職支援を実施します。また、都市部の若者が過疎地等で暮らし、地域協力活動を行う「地域おこし協力隊」事業を展開し、1000自治体での実施をめざします。

さらに、中核性を有する地方都市を中心として、近隣の市町村が連携する地方中枢拠点都市圏の形成を図るとともに、都市機能を集約したコンパクトなまちづくりを推進します。

魅力ある地域づくりのためには、高齢者等の活躍も重要です。企業、経済団体、シルバー人材センター等と連携を強化することにより、高齢者の知識・技能・経験等を生かせる多様な働き方の就業機会を創出してまいります。

一方、高齢者等も安心して暮らせる地域社会の構築も大事なテーマです。防犯ボランティアの活動支援や地域安全センター等の防犯拠点を整備することで高齢者等を犯罪から守る体制を強化するとともに、改正災害対策基本法が施行されたことを踏まえ、災害弱者の名簿作成を徹底し、日常的に避難訓練等を実施するなど災害から高齢者等を守る体制を強化します。

地域の経済と雇用を支える中小・小規模企業の経営支援や農林水産業の振興、再生可能エネルギーを生かしたまちづくりも重要です。そして、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催効果を東京のみならず、広く地域に波及させるための観光産業の振興にも取り組んでいきたいと思います。

例えば、中小・小規模企業の経営支援では、中小企業が持つ技術・アイデアを製品化し、日本各地そして世界の市場を取り込むため、地域の公設試験場等と連携した研究開発から、中堅企業や中小企業基盤整備機構等の連携による販路開拓まで、強力に一貫支援してまいります。

(3)安心な地域づくり

地域づくりの三つ目の柱である「安心な地域づくり」は、日本列島に土砂災害や水害などが多発する今、国と地方が連携して地域の防災・減災、防犯対策等に取り組むことは、政治や行政の大きな責任です。

今年6月に閣議決定した国土強靱化基本計画を受け、今後は都道府県・市区町村ごとの計画策定を推進していきたいと思います。橋や上下水道、道路、公営住宅、学校など老朽化したインフラの改修や耐震化、大雨による水害・土砂災害への対策も急がなければなりません。南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの巨大災害の発生も懸念されています。ハード・ソフト一体となった地震・津波対策、住宅・建築物の耐震化、密集市街地の改善・整備を急がなくてはなりません。

交通安全施策および地域防犯対策としては、通学路の安全性向上を図るとともに、音響式信号機等のバリアフリー対応型信号機の整備等により、地域の交通安全に向けた取り組みを推進します。また、歩行者が安全・快適に通行できる歩行者専用道や自転車レーン等を活用して、安全で快適な通行空間の面的な整備も推進します。

さらに、空き家問題も大きな課題になっています。周囲に迷惑を掛けているような空き家、屋根や壁が崩れそうな危険な空き家は除却を促すなど、空き家の整理・利活用に向けた法整備にも取り組みます。併せて、既存の住宅ストックを有効活用するための中古住宅・リフォーム市場の活性化や戸建て住宅の賃貸流通を促進してまいります。

(4)活力ある地域づくり

地域づくりの四つ目の柱である「活力ある地域づくり」では、これからの社会の担い手として期待される女性や若者が主役です。

女性の活躍に関しては、来年4月に本格施行となる「子ども・子育て支援新制度」を着実に推進することに加え、妊娠・出産、そして出産直後の母と子をサポートする産後ケアと切れ目のない支援の推進を掲げております。

女性の健康を守るため、がん対策の重要性は言うまでもありません。乳がん、子宮頸がん検診クーポンの配布を継続していきます。その上で、各市町村が検診台帳を整備し、電話を使った「コール・リコール」(個別の受診勧奨)事業を推進。さらに、精密検査を要する人への再勧奨に取り組みます。

若者の活躍については、地域おこし協力隊の推進など、地域活性化を支援するとともに、就労支援、ニート対策、正社員化などの若者雇用対策や、若者の創業・起業を支援するほか、Uターン就職等への支援や、地域と大学が協同して地域再生・地域づくりに取り組む域学連携を進めていきたいと考えております。

具体的には、キャリアアップ助成金の活用等により、非正規労働者の正社員化を推進します。また、ジョブカードについて、生涯を通じたキャリア・プランニングのツールへとコンセプトを見直し、個人の主体的なキャリア形成を支援してまいります。

若者だけでなく深刻な社会問題になっている「危険ドラッグ」対策は喫緊の課題です。まず国内の販売等に関する実態調査をするとともに、海外情報の積極的な収集・活用、税関等での水際対策の強化を行います。また、鑑定の時間短縮の研究、簡易に鑑定ができる技術の開発など対策強化とともに、学校での薬物教育の強化や深刻化する前の相談・治療体制の整備など、総合的な対策を進めます。

このほか、いじめなど重大な問題に迅速に対応するための新しい教育委員会制度の構築や給付型奨学金制度の創設など教育の充実を進めます。

さらに、NPO等非営利法人の活動支援や地方議会の政策提言機能を強化する議会改革、公会計改革による自治体財政の「見える化」なども進めていきたいと思います。

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