e奨学金の返済方法 所得に応じた柔軟な仕組みに

  • 2014.08.04
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年8月4日(月)付



学生への経済的支援について議論する文科省の有識者検討会は先週、奨学金の返済月額を所得に応じて柔軟に設定できる仕組みにすべきとの報告書案をまとめた。今月中にも正式決定し、文科相へ提出する予定だ。

国の奨学金は、独立行政法人・日本学生支援機構を通じて大学生らに貸し付けられている。今年度の利用者は、有利子と無利子の貸付を合わせて約140万人に達する。

検討会で議論されたのは返済の在り方だ。利用者は卒業後、貸与額や返済期間に応じて毎月一定額を返済しなければならない。

しかし、卒業後に就職できなかったり、身分が不安定で収入の低い非正規雇用で働く若者は少なくない。このため、返済金の滞納者は増加傾向にあり、13年度は約33万人に上る。

3カ月以上延滞すると、滞納者は個人信用情報機関に登録され、クレジットカード発行や将来の住宅ローンなどの借り入れに支障が出てくる。効果的な対策を進め、滞納者を減らさなければならない。

現行の無利子奨学金には、年収300万円以下の場合に返済を猶予する「所得連動返還型」がある。だが、300万円を超すと、通常の返済方法が一律に適用されるため、工夫を望む声が大きい。

今回の報告書案は、「所得連動返還型」を改善し、卒業後の所得に応じて返還月額を変更できるよう提案した。公明党が導入を訴えている政策であり、ぜひ実現させたい。

文科省も来年度予算の概算要求に、制度設計に向けた実態調査などを盛り込む方針だが、課題もある。

返済者間の公平・公正さを期すには、所得を把握しなければならない。給料から税金などを源泉徴収される会社員と比べ、自営業者の所得を正確につかむには限界がある。

16年1月から開始予定のマイナンバー制度は、国民一人一人の社会保障と税などの情報を一元管理するもので、所得把握の選択肢の一つだ。国民の理解を得ながら、この制度を活用できないだろうか。

既に、米国や英国、豪州などは所得連動型で返済できる制度を採用している。海外の事例も参考にしながら、実現してもらいたい。

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