eネガワット取引 我慢の節電から脱却へ

  • 2014.07.30
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月30日(水)付



電力会社は家庭への普及模索を



連日連夜の暑さ。冷夏の予報は一転、当面は全国的に猛暑の夏になる見通しだ。体調管理には適切な冷房使用が欠かせないが、ピーク時の電力需給の行き詰まりを懸念する声は根強い。

電力供給が厳しい状況は当面の間続く。政府は太陽光に代表される再生可能エネルギーの普及加速と、節電など即効性の高い取り組みを同時に推進する必要がある。国民の協力による節電は重要な取り組みの一つだが、消費者が得られるメリットが実感しにくい。この難点をクリアし、節電による需要抑制の効果を最大限に引き出すには「ネガワット取引」が有効である。

ネガワットは英語で「負」を意味する「ネガティブ」と、電力単位の「ワット」を組み合わせた造語。特徴は電力会社の要請を受けた消費者の節電努力を"発電分"と捉えて、見返りに電力会社が節電分へ対価(手数料)を払う点にある。架空の電力を取引し、需要を減らせるためネガワット取引と呼ばれる。

電力会社には、手数料の支払いを上回る利点がある。沖縄を除く電力各社は電力不足を解消するため、火力発電をフル稼働中だ。発電に必要な液化天然ガス(LNG)の急増は、電力会社の収益を圧迫する頭痛の種である。電力会社にすれば、使えばなくなるLNGに費用を掛けるより、消費者に手数料を支払う方が電力需要を効果的に抑制できる上、消費者に節電に協力してもらいやすくなる。

既に、関西電力は消費量の大きい企業向けを中心とした取引の実績がある。2013年夏季のネガワット取引での節電効果は約5万キロワット。一般的な太陽光発電所(メガソーラー)の5カ所分に相当する電力量だ。利点の大きい取引だが、関西周辺以外への広がりはない。ネガワットの考え方が浸透しておらず、活用が進まないことが一因だ。電力使用量の把握が容易な大口需要家であれば、他の電力会社でも実施は可能ではないだろうか。

大口需要家との取引が拡大し利点が認識されれば、将来的には家庭への適用も視野に入る。取引の実現には、電力使用状況を瞬時に把握する計測器(スマートメーター)の普及が欠かせないだろう。政府は各電力会社と連携し、ネガワット取引の拡大策を模索してほしい。

エネルギー問題は、電力会社の努力だけに頼っていては、解決が難しい。我慢を強いる節電から脱却し、国民が主体的に電力使用の抑制に取り組める環境が重要だ。


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