eネット不正送金 企業も自衛の努力が必要

  • 2014.07.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月11日(金)付



安全ソフトの更新など早急に



中小企業など、法人のインターネット口座をウイルス感染などにより乗っ取り、資金を奪うネット不正送金が急増している。全国銀行協会(全銀協)は、被害のさらなる拡大を防ぐため、銀行が補償する際の指針を策定する方針だ。指針は、17日にも正式決定し、加盟銀行に例示する。

具体的には、対策ソフトの導入や更新、パスワードの定期的な変更などの6項目となる見込み。加盟各行は、指針を参考に、それぞれ補償ルールを作ることになる。

全銀協が5月に公表した調査結果によると、企業が被害者となったネット不正送金は、2013年に14件、4700万円ほどだったが、今年は3月までに21件、1億4000万円の被害が報告されている。その後も被害の増加傾向は加速しており、年間の被害総額は100億円に迫る勢いと報道されている。

個人口座での不正送金被害は、公明党の推進で制定された預金者保護法に基づき、原則補償がルールとなっている。一方で、法人口座については、商取引のプロとして一定の自己責任を求める観点から、補償のルールは定められていない。

ウイルス感染などによるネット不正送金は、セキュリティー対策に十分な資金や人材を割けない中小企業が被害に遭うことが多くなる。

全銀協の調査によると、12年度のネット不正送金被害について、銀行側は対象となる件数のうち94%の補償を行っているが、企業の被害額は、個人顧客に比べ多額に上る。

今のまま被害が拡大すれば、中小企業との取引が多い地銀の補償額が急増し、経営を圧迫する事態になりかねない。既に送金サービスの一部中止に追い込まれた地銀もあり、対策は待ったなしの状況にある。

ネットを通じた不正送金は、これまで海外で多く起きていたが、危機意識を高めた欧米各国が対策を強化したため、最近では、アジアの金融機関が標的になりつつあると見られている。

技術面では、ソフトの安全性向上などを図るのは当然だが、ネット銀行の利用者全てに脅威が及ぶ可能性も周知しなければならない。全銀協は、銀行側にも使い捨てパスワードの導入をはじめ、複数の対策を組み合わせることなどで不正送金防止策を強めるよう求める考えだ。

日本でも、欧米諸国と同様の強い危機意識を共有し、卑劣な詐欺行為を未然に防ぐ体制を早急に整えなければならない。

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