e原油価格上昇 国民生活への影響避けよ

  • 2014.07.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年7月3日(木)付



一層の省エネ・再エネ推進が必要



イラク情勢の悪化に伴い、原油価格が10週連続で上昇している。日本の原油価格の指標であるドバイ原油価格は、6月下旬に5ドル程度上がり110ドル台と約9カ月ぶりの高値を付け、6月30日時点のレギュラーガソリン小売価格は、先週比で1円高い168.4円だった。

1日発表された日銀の6月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断が3月時点の予想を上回った。日本経済に回復の兆しが見えてきたが、原油価格の上昇は、これに水を差しかねない不安要因だ。国民生活に深刻な影響が生じないよう、政府はしっかり注視してもらいたい。

特に、地方にとっては切実な問題だ。車がなければ自由に移動することができない地域が多く、ガソリン価格の上昇はそのまま、家計に重くのしかかる。さらに、民間バス会社の約7割、公共バスの9割前後が経営赤字に苦しんでいる。この状況に追い打ちがかかれば、路線廃止が現実味を帯びかねない。

今回の原油価格上昇の最大要因は、産油国のイラクの政情不安である。シリアの内戦に乗じて勢力を伸ばしているイスラム教スンニ派の過激派武装組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は先月29日、シリア北部からイラク中部までの一帯を現時点の「領土」とする、「イスラム国」の樹立を一方的に宣言した。イラク国内の宗派対立は、ますます泥沼化の様相を呈しており、紛争解決には時間がかかりそうだ。

2008年のリーマンショック時には、大量の投機マネーが原油市場に急激に流れ込んで価格が暴騰し、日本経済に多大な影響をもたらした。政府は緊急対策として、中小企業のセーフティネット保証の対象業種の延長・拡大をはじめ農林水産業、運輸業、離島地域、生活困窮者といった幅広い範囲に支援を行った。その結果、被害を最小限に食い止めることができた。今回も政府は、農林水産業や運輸業をはじめ多分野への影響に目配りしてほしい。関係者から要望や意見が寄せられたら、素早く対応してもらいたい。

世界的な景気回復による需要の伸びに加え、中国やインドなど新興国の消費も急増していることから、中東情勢が沈静化しても、原油価格が高止まりする可能性もある。

省エネルギー化や再生可能エネルギーの拡大に伴って、国内の石油製品の需要は減りつつある。政府には、より一層の対策推進と機動的な対応が求められよう。

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