e国際機関と日本人職員 世界に貢献できる陣容か

  • 2014.06.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月3日(火)付



戦略的な人材の育成に取り組め



世界銀行(世銀)は、副総裁兼総監査長に財務省国際局担当の仲浩史審議官を任命すると発表した。7月に就任し、内部統制の向上を担当する。世銀は主に開発途上国の経済発展を支援し、教育から気候変動まで幅広い課題解決の一翼も担う。ジム・ヨン・キム世銀総裁は「国内外の金融機関監督など広範な経験がある」と日本人幹部の登用理由を説明した。

文化や政治状況の異なる各国政府と複雑な政策調整が必要な場が国際機関だ。日本人特有の細やかな目配りと行動力は、交渉の円滑化に欠かせない。元・国連事務次長の明石康氏、現・国際原子力機関(IAEA)事務局長の天野之弥氏といった日本人の活躍は、わが国の外交を進める上でも役立つ。

日本人の世銀副総裁は今回で9人目となるが、世銀の五大出資国の一角を占め、米国に次ぐ世界2位の出資額の貢献に照らすと物足りない。国連の専門機関である国際通貨基金(IMF)への出資額も日本は世界2位だが、日本人職員は数%程度。国連本部の日本人職員数も多額の予算分担金に比べわずかだ。

国際機関は加盟国の予算負担と職員数の相関性を重視し、世界中から公平に人材を採用するのが基本ルールだ。国際社会への貢献度を資金提供額の多少で論じることに異論もあるが、大半の国際機関で日本人職員の占める割合は一貫して低い。国際情勢が大きく動いている時代だ。日本の明確な意思を広く世界に発信できる陣容の強化・拡充の観点から、日本人職員の増員に取り組むべきである。

世銀総裁は米国出身者を、IMF専務理事は欧州出身者を選出するのが"暗黙の了解"といわれる。世界政治の縮図でもある国際機関の人事では、国の発言力の強弱が職員数となって現れる側面もある。だからこそ、国際機関の重要ポストを獲得するため、各国は戦略的に取り組む。日本人職員が増えない原因の一つは語学の問題もあるが、国家的な戦略性の弱さにあるともいえよう。

各機関で若い日本人職員を増やし、生え抜きを地道に幹部職員へと育成すべきだ。若者が国際機関の採用に挑戦する場合、外務省の派遣制度を活用するのが通例だが、派遣費用の負担期間は原則2年間と短い。世界各国の人材との厳しい採用競争を経て、国際機関の正規職員になるまで2年以上掛かることが当たり前の中で、制度が若者の挑戦を支えきれていない現状をまずは改善すべきではないか。

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