e拉致再調査 北の報告真偽見極めよ

  • 2014.06.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月31日(土)付



被害者帰国へ粘り強い交渉必要



日本と北朝鮮の両国政府が日本人拉致被害者らの全面的な再調査を行うことで合意した。北朝鮮に厳しい対応を求め、拉致被害者の早期帰国を実現させてほしい。

スウェーデンで行われた日朝の政府間協議で北朝鮮側は、拉致の疑いがある行方不明者(特定失踪者)なども含め、日本人に関する全ての問題を解決する意思を示したという。「拉致問題は解決済み」との立場を取ってきた北朝鮮が、従来の姿勢を転換させたことは、一歩前進だといえよう。

これからは、調査の実効性や信ぴょう性をいかに確保するかが問われる。

かつて、北朝鮮は、拉致被害者である横田めぐみさんのものだとして遺骨を渡してきたが、DNA鑑定の結果、別人のものだと判明した。また、2008年にも再調査を約束したが、一方的にほごにされた経緯もある。

北朝鮮は今回の合意を受け、全ての機関を対象とした調査を実施できる「特別の権限」を持つ委員会を約3週間後に設置し、調査の進展を随時、日本側に報告する方針だ。調査状況を確認できるよう、日本政府関係者の北朝鮮滞在や、関係者との面談、関連資料の提示などにも応じる。

さらに、生存する被害者が発見された場合、日本に帰国させる方向で必要な措置を講じる。

北朝鮮は、金正恩第1書記の就任後も体制の不透明さは変わっていない。日本政府は、真摯な調査が行われているか、じっくり見極めてもらいたい。

一方で、日本側は調査が開始された時点で人の往来や送金、人道目的の北朝鮮船の入港禁止措置など、独自に課している制裁を解除する。

北朝鮮に具体的な行動を促すため、必要かもしれないが、何ら進展がないまま制裁解除を続ける事態は避けるべきだ。そのためにも粘り強い交渉を続け、納得できる成果を出さなければならない。

また、日本は米国や韓国などとともに、厳しい制裁を通じて、北朝鮮に非核化に向けた行動を求めている。拉致に加え、核やミサイル問題でも国際社会から批判されており、解決に向けて、関係国との連携を重視していく必要がある。

日本人の拉致問題は、1970年代から80年代にかけて起きた。被害者の家族は高齢化している。交渉の進展を焦り、足元をみられる事態は避けなければならないが、可能な限り速やかな解決をめざしてもらいたい。

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