e欧州議会選挙 EU批判の極右が台頭

  • 2014.05.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月21日(水)付



「反移民」で政治不信の大衆を糾合



「ヨーロッパを妖怪が徘徊している。共産主義という妖怪が」(1848年、『共産党宣言』)と論じたのは、マルクスとエンゲルスだが、現在、欧州各国で存在感を高めているのは「反・欧州連合(EU)」や「反移民」を掲げる「極右」と呼ばれる勢力だ。

あす22日から25日にかけて、全28加盟国で実施される欧州議会選挙(定数751=原則として加盟国の人口比例で議席配分、任期5年)では、各種世論調査から、極右の大幅議席増が予想されている。

フランスでは、2012年の大統領選で、父親の跡を継いだ極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が極右候補として過去最大の得票率を記録した。この勢いは衰えず、与党の社会党が大敗した先月末の統一地方選でも、大きく議席を伸ばした。世論調査では、二大政党を抑えてトップを走っている。

同じくオランダの自由党は閣外協力(現在は解消)によって、移民政策を転換させた。スイス国民党は、主要政党として、連立政権の一翼を占め続けている。デンマークでは、極右の国民党が第三党として定着、閣外協力によって存在感を示し、フィンランドでも11年の総選挙で極右政党が第三党に躍進した。オーストリアでは昨年9月の国民議会選挙で自由党が大勝し、スウェーデンやギリシャ、ハンガリー、ベルギーなどでも、極右政党の台頭が目立つ。

選挙後にこれらの極右政党が結集し、新会派を結成する動きもあり、EUを強化するはずの欧州議会が、足元から掘り崩される恐れもある。

国境を越えて平和と繁栄をめざし、移民や難民に寛大だったEUで、こうした政治勢力が拡大するのはなぜか。

その背景には、従来の保守主義と社会民主主義の二大勢力を代表する既成政党に、有権者の不満が増大していることがある。EU統合の拡大、深化に伴う痛みは各国の国民を痛撃する。人種やイスラムへの偏見に加えて、雇用や住宅をめぐる単純労働者と移民との競合や、福祉のパイが移民に奪われるという大衆の不満や不安に大政党は応えきれず、極右が伸張する条件が生まれたのである。

極右政党は、変容する有権者に対応し、ポピュリズム(大衆迎合)の道を進んでいる。これは、欧州だけの一時的な現象ではないはずだ。グローバリズムの奔流の中で、富の公正な分配や所得の向上をいかに実現するか。あらゆる先進国の政党政治にとって重要な課題であり、欧州議会選挙を注視していきたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ