e脅かされる海洋生物の保全

  • 2014.05.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月19日(月)付



漁業者を育成し干潟・藻場守れ



重要海域の選定

海に住む多様な生き物をどう守るか―。

日本の排他的経済水域(EEZ)内で、海洋生物の生息や繁殖に重要な海域の抽出作業を進めてきた環境省の有識者会議はこのほど、沿岸域で約270カ所、沖合で約50カ所を重要海域として初めて選定した。具体的な区域や特徴などは、今夏に公表する。

生態学や生物学の観点から重要とされる場所でのデータ蓄積が目的だ。社会、経済、文化的な重要性は考慮しておらず、選定は直ちに何らかの規制に結びつくわけではない。保護が必要な海域がどの程度あるのか、生物の多様性を脅かす危険要因は何かといった基礎調査を進め、海洋生物の保全に生かしてほしい。

海洋研究開発機構の調べによると、日本近海には、約23万種といわれる海洋生物種数の14.6%に当たる約3万3千種が生息している。世界的にも生物多様性は極めて高いものの、沿岸域の水産資源の生産力は近年、低下傾向にある。魚類や貝類などの産卵や生育場であり、海水の浄化機能も果たす干潟や藻場が消失、劣化しているからだ。

水産庁によると、干潟の水質浄化機能は30年前の4分の1に低下、藻場は3割も面積が減った。埋め立てや水質汚染に加え、保全活動を担ってきた漁業者の減少・高齢化も一因という。乱獲や密漁が水産資源の枯渇を招いてきた側面もあり、海の生物多様性や生態系の機能を理解し保全する漁業の担い手の育成を急がなければならない。

海洋資源の活用も課題の一つだ。沖縄県の渡嘉敷・座間味の両村は、今年3月に国立公園に指定された慶良間諸島周辺のサンゴ礁を保全するため、ダイビング業者の立ち入りを制限する条例制定をめざしている。2008年施行のエコツーリズム推進法に基づく国内初の試みとなる。

世界屈指の透明度に魅せられ、この地域を訪れる観光客は年間約20万人、ダイビング船は一日100隻を超す日もあるという。このため、ダイバーが巻き上げる砂やフィン(足ひれ)、船が投げ入れるアンカー(いかり)などがサンゴを傷める被害が出ている。

環境保全活動に貢献する業者は規制しない方針だ。ただ、観光業が両村の収入の大きな柱だけに影響は避けられないかもしれない。海洋資源の保全を優先する先進的な取り組みは、極めて重要といえよう。

一度失った自然を取り戻すことは容易でない。人間の活動は、どう自然と関わればいいか。問いかけ続けていきたい。

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