e企業情報の流出 官民連携で技術を守れ

  • 2014.05.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月16日(金)付



中小企業への支援強化も必要



日本の企業情報の不正流出を防ぐため、政府の検討会が報告書をまとめた。6月に策定される新たな「知的財産推進計画」に反映させる予定である。

企業には研究開発や経営、顧客などの秘密情報がある。特に重要な情報は法的保護が受けられる「営業秘密」として指定する企業も多い。最先端技術を含む営業秘密は、日本の国際競争力の源泉であるだけに、それを狙った海外企業の動きは活発だ。

報告書は「近年、大型かつ深刻な技術情報の流出事案が顕在化している」と指摘している。今年3月、東芝の半導体の研究データを韓国企業に提供した疑いで業務提携先の元技術者が逮捕されたことは記憶に新しい。

経済産業省が昨年発表した調査では、過去5年間で営業秘密の「明らかに漏えい事例があった」「おそらく情報流出があった」と回答した企業は13.5%に上る。情報の流出元は中途退職者が最も多かった。リストラや処遇への不満から転職・退職した従業員に対し、海外企業が高額な報酬を示して不正に持ち出させているとみられる。

企業には情報管理を徹底する自衛策が求められる。

営業秘密へのアクセスや持ち出しの制限はもちろん、コンピューターの操作履歴を残すといった対策が欠かせない。人事管理を見直し、従業員の処遇を改善したり、秘密保持契約を結んだりすることも重要になる。

一部企業では、こうした取り組みが進んでいるものの、企業の対応には大きな開きがある。特に、中小企業では、情報管理のノウハウや人手が不足し、手探り状態だ。

企業努力だけでは限界がある。中小企業が知的財産に関して相談しやすい窓口を整備するなど、手厚い対策が大事になる。官民で連携して、技術を守り抜く体制を整えなければならない。

一方、報告書は、欧米諸国と比べ不十分とされる「営業秘密管理法制の見直し」も提言している。

例えば、不正競争防止法の罰金は個人の場合1000万円以下だが、流出先が国内でも海外でも同じ金額だ。「不正流出は割に合わない」と思えるよう、外国企業に情報流出した場合は、罰則を重くする制度を設ける国もある。

技術情報の海外流出が日本の製造業が停滞する一因になっているといわれ、国益の損失は大きい。どのような法整備や制度が有効なのか、政府は見直しを積極的に進めてほしい。

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