eエネルギー資源 国際情勢に揺れる確保策

  • 2014.05.12
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月12日(月)付



天然ガスの調達手段の多様化を



資源に乏しい日本が世界3位の経済力を持続できるのは、友好国との資源貿易が順調である点が大きい。世界経済は、相互協力が前提だ。国家間の経済連携は、平和的な外交関係の構築に貢献するというのが国際的な認識である。

それでも、不測の事態は避けられない。エネルギー資源の大半を海外に頼る日本が警戒すべきは、資源輸出国や、その周辺で発生する内戦、テロなどの地政学的リスク(危険性)だ。

ロシアとウクライナの政治情勢が緊迫している。そのあおりか、天然ガスを加工した液化天然ガス(LNG)の市場取引に両国関係が影響を及ぼしつつある。環境にやさしいLNGは世界的に需要が増え、購入価格も高止まりしている。世界最大級の天然ガス埋蔵量を誇るロシアは、ウクライナ向けガス輸出を6月から実質的に停止する公算が大きい。約4000億円近いガス代の滞納が停止理由だが、政治的思惑もうかがえる輸出停止が現実化すれば、LNG市場の混乱は避けられない。

東日本大震災以降、日本は火力発電用のLNG輸入を増やし、調達費用が膨らんでいる。日本の天然ガス輸入量は、ロシア産が約1割を占め、今後も増加が期待されている。日ロ両政府は継続的なエネルギー協力で合意しているので、輸入が滞るとは考えにくい。だが、ウクライナ情勢が混迷を深めれば日本への悪影響が表面化する恐れもある。

ここに来て、南シナ海では中国が石油掘削作業に着手し、ベトナムの艦船とにらみ合いを続けている。背景には、同海域の領有権をめぐる事情が見え隠れする。LNG価格は原油に連動して決定されるので、問題の長期化でLNG価格の一層の高騰も懸念される。日本の資源貿易を不安定化する動きに注視が必要だ。

日本に必要な対策は、安価で安定した資源供給を国民に保障する「エネルギー安全保障」を戦略的に強化することだ。国内で発電資源の中核を担いつつあるLNGだが、需要急増を想定してこなかったため、石油のような備蓄政策の対象ではない。

海外ではLNG備蓄が進み、天然ガスの形で地下貯蔵している。日本でも民間企業による地下貯蔵が一部で実施されているが、法整備が十分でないため、貯蔵規模の拡大が遅れている。官民の協力で備蓄を進める環境整備が必要だ。LNGの調達先の多角化も欠かせないだろう。

政府は安定的なエネルギー供給に向けた取り組みを加速してほしい。

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