e異次元金融緩和1年 デフレ脱却、これから正念場

  • 2014.04.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年4月3日(木)付



景気動向を見極め機敏に対応せよ



日銀が黒田東彦総裁の下で、量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)政策を決定して、あす4日で1年になる。

異次元金融緩和は、デフレ脱却を実現するため、日銀の資金供給量を2年間で倍増する。2年程度を念頭に置いて、早期に物価上昇率2%を実現する政策である。

日銀が過去に例のない規模の国債を買い入れ、世の中に出回る資金の量を大幅に増やした結果、この1年間で円高の是正や株高の流れが加速、景気回復を後押ししてきた。輸出関連分野を中心に企業の収益が大幅に改善され、今年3月末の株価は年度末としては、7年ぶりの高水準を達成した。

景気は明るさを増しており、異次元金融緩和は着実に成果を収めているが、これからが正念場である。

まず、今月からの消費税率アップだ。駆け込み消費の反動や企業業績の落ち込みで景気が一時的に失速した場合、短期間で回復できるかどうか。政府は、景気の鈍化を最小限に抑えるため、事業規模18.6兆円の緊急経済対策で対応する。しかし、経済は生き物であり、楽観は禁物だ。

海外の不安要因も無視できない。米国の金融緩和縮小や新興国の通貨安、ウクライナ情勢を巡る米欧とロシアの対立、中国の金融システム不安などによって世界経済が混乱すれば、日本も影響を避けられない。

デフレの度合いを測る消費者物価指数(生鮮食品を除く)は昨年6月、伸び率が前年同月比でプラスに転換、その後順調に上昇してきた。だが、ここに来て、3カ月連続で伸び率は変わらず、足踏みしている。

今後の経済状況によっては、日銀が追加の金融緩和を市場から催促される場面が出てくるかもしれない。すでに黒田総裁は、「必要なら躊躇なく調整を行う」と追加緩和に含みを持たせている。

ただ、安定的な物価上昇は、家計や企業の需要に支えられていないと実現できない。そのためには、賃上げや雇用の改善によって、内需を拡大する経済の好循環が求められる。日銀は、物価だけでなく経済全体の情勢や金融市場の動向などにも幅広く注視し、的確で機敏な対応を怠らないでもらいたい。

一方、政府は異次元金融緩和の効果が浸透している間に、民間の潜在力を引き出す新たな経済成長戦略を打ち出し、実行に移すべきである。

政府と日銀が今まで以上に一体となって、デフレ脱却に取り組んでほしい。

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