eがん教育 質の高い授業の展開を

  • 2014.03.18
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年3月18日(火)付



学校現場を支援する取り組み必要



国のがん教育の方向性が示された。文部科学省が外郭団体の日本学校保健会に設置した、がん教育に関する検討委員会の最終報告書が先月、まとまった。

同省は2014年度から、先進自治体の事例を分析・調査するとともに、報告書を踏まえたモデル事業を実施する。同省内に新たに検討会を設け、全国に展開させるための議論も行う方針だ。

国民の2人に1人が、がんになる時代だ。子どもたちが健康の大切さを学ぶと同時に、患者に対する偏見や差別を持たないようにするための機会を教育の現場で設ける必要がある。

現在、がんは保健体育の授業で生活習慣病の予防や喫煙などの有害性を学ぶ際、他の病気と併せて紹介される程度にすぎない。国が定めた「がん対策推進基本計画」は、「がんそのものやがん患者に対する理解を深める教育は不十分」だと指摘している。公明党が、がん教育の重要性を訴えてきたのは、このためだ。

報告書では「いのちの大切さを育む、がん教育」との視点で、教育の目標を(1)がんを正しく理解する(2)いのちの大切さについて考える態度を育成する―とした。がんを正しく理解すれば、大人に成長してからの検診の受診率アップにつながるはずだ。闘病生活を送る人々に対する理解が深まれば、いのちの大切さを学ぶことも期待できる。

具体的な教育内容として、(1)発生要因(2)予防(3)早期発見・検診(4)治療(5)がん患者との共生―などを挙げた。いずれも重要な内容である。

実施に当たっては、幅広い関係機関と連携して進めることが求められる。例えば、医師や看護師、保健師、がん経験者らを外部講師として招き、協力を得るなど指導方法を工夫してほしい。ただ、学校だけの取り組みでは限界がある。

教育委員会と自治体のがん対策の担当部局が連携して、外部講師のリストを作成するなど、学校現場を支援するべきだ。がん医療に携わる専門医でも全ての医師が、がん全般を語れるわけではない。がん教育を担当できる医師の養成も欠かせない。

児童や生徒の中には、小児がんの当事者や経験者、がんを治療している家族がいる場合もある。授業では、こうしたケースにも十分に配慮するべきである。

今後、モデル事業の実施先の選定が進められる。事業の実施によって得られた課題や教訓などを十分に検証して、全国的な普及に生かしてほしい。

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