e水俣病の運用指針 単一症状も認定に道開く

  • 2014.03.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年3月17日(月)付



申請者の個別事情に配慮し審査を



環境省が水俣病の認定基準に関する運用指針を熊本県などに通知し、水俣病問題は新たな局面を迎えている。

今回の指針は、申請者に感覚障害など単一の症状しかない場合でも、個々の申請者の事情を具体的に考慮する「総合的検討」を行うことで、水俣病患者に認定されるようにするものだ。患者認定をめぐり混乱が続く事態の改善につながることを望む。

公害健康被害補償法による水俣病の認定は、1977年に環境庁(当時)が示した認定基準に基づき、熊本県や新潟県など自治体の審査会が行っている。

77年の基準は、感覚障害や視野狭窄など複数の症状があれば認定する。単一の症状の場合も「総合的に検討」することで認定するとされたが、検討の内容が明確でなく、実際には水俣病と認定される例はほとんどなかった。

しかし、昨年4月の最高裁判決は、感覚障害しかない人を水俣病患者として認定した。判決の中で、複数の症状の組み合わせが認められない場合の「総合的検討」の重要性が指摘されたことで、国としても、その内容を具体化することが急がれていた。

今回の指針は、最高裁判決を尊重した上で、「総合的検討」の内容として、単一の症状と有機水銀に汚染された魚介類の摂取状況との因果関係を判断することを明記。家族に認定患者がいるかや、申請者の居住地域での水俣病発生状況なども確認する。

行政が認定判断をする以上、客観性と公正性を確保するため、さまざまな確認を求めることはやむを得まい。

ただし、水俣病の公式確認から58年がたち、申請者は高齢化している。因果関係の立証のための資料提供などで申請者に過重な負担がかからないよう柔軟に運用すべきだ。

一方、認定審査の環境も整えなくてはならない。

昨年10月、国の公害健康被害補償不服審査会は最高裁判決を踏襲して、熊本県が棄却した人を認定相当と決めた。そのため、熊本県は、環境省と不服審査会の考え方の不一致などを理由に、認定業務を休止している。

今後、国は認定審査を行う臨時水俣病認定審査会(臨水審)を設ける方針だが、認定申請を希望する人は多い。多数の申請があった場合でも、円滑に審査できるよう万全を期すべきだ。

熊本県は、今回の指針が最高裁判決に沿って運用されるのか注視している。臨水審は、指針の柔軟な運用に努め、丁寧な審査を進めてほしい。

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