e超高齢社会を生きる(1)進まない生活支援

  • 2014.01.28
  • 情勢/社会
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公明新聞:2014年1月28日(火)付



地域力は衰退の一途
介護予防 住民参加の工夫を



少子高齢化が急速に進展する中、医療や介護、住まいなど、超高齢社会に適した新たな制度構築が求められている。現場を歩き、現代社会が抱えるさまざまな課題を探った。

東京の「北の玄関口」とも呼ばれるJR赤羽駅(北区)。同駅から20分ほど歩くと、広大な団地群が広がる。都営桐ケ丘団地だ。

65歳以上の高齢化率が25%超の北区にあって、同団地を含む桐ケ丘地区の高齢化率は、52.4%と2倍以上。極端に高齢化が進む。かつてはファミリー世帯でにぎやかだった団地も、子どもたちは独立し、年老いた親たちだけが残った。

「2人とも足が悪くてね。年が明けてから外出したのは数えるほどよ」

こう話すのは中村かほるさん(78)だ。夫の信彦さん(83)は昨年、大腿骨の骨折などで2度入院。「要介護3」となり、週3回の訪問リハビリを受けているが、家でも杖や歩行器は手放せない。

「ゴミ出しも大変だし、蛍光灯も交換できなくて、何カ月も切れたままだよ」。信彦さんは力なく笑った。

桐ケ丘団地には、介護ヘルパーが帰ってから数日間、誰とも話す機会がない一人暮らしの高齢者もいる。

「私たちが把握しているだけでも、孤立死は年間10件余り。実態はもっと多いはず」。桐ケ丘地区の地域包括支援センター管理者の藤井武彦さんは指摘する。センターでは団地の自治会とも協力し、高齢者の居場所づくりにも取り組むが、男性は参加に消極的だ。

「せっかく団地に空きが出ても、入居する人は高齢者。地域力は落ちるばかりだ」と藤井さんの悩みは深い。

一方、住民参加型の介護予防を推進し、大きな成果を挙げている地域がある。

県内で「シルバーリハビリ体操」の普及を推進している茨城県。21日、県立健康プラザ(水戸市)で行われていた同体操の指導士講習会を訪ねた。

「大きく髪をかき上げる感じでーっ」

講師の動きに合わせ、受講者が肩を回したり、下半身をひねったりしている。講師・受講者ともに高齢者。講習会は笑顔が絶えない。

この体操は関節や筋肉の動きを意識するもので、日常生活を送る上での動作の訓練にもなる。県の介護予防策の中心的役割を担い、2005年度のスタート以来、輩出した指導士は6000人に迫る。彼らが12年度に県内で開いた教室は約2万8000回、参加者は延べ45万人を超えた。

成果も上々。体操を考案した医学博士の大田仁史さんによると、「指導士が多い市町村では、軽度の要介護者が少ないことが分かった」という。「住民が住民を育てるシステムがなければ、これからの超高齢社会と向き合えない」とも指摘する。

高齢者が主体的に介護予防に取り組めば、健康維持にも一定の効果がある。公明党は、高齢者がやりがいを持って介護予防に励めるよう、介護保険料やサービス利用料を軽減する「お元気ポイント」や、介護ボランティアの普及を提案している。

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