e東京五輪と地域活性化

  • 2014.01.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年1月8日(水)付



合宿誘致は振興策の一案
選手・観光客と住民の交流も有意義



2020年の東京五輪・パラリンピック開催決定を受け、参加チームの事前合宿や観光客の誘致をめざす自治体の動きが出てきた。

例えば、富士山が世界遺産に登録された静岡県は、五輪の合宿誘致だけでなく、19年に国内で開かれるラグビー・ワールドカップの試合会場としても立候補する。北海道新幹線が15年に開業する北海道は、18年に韓国・平昌で開かれる冬季五輪も含め両五輪のチーム合宿の候補地になるための準備を進めている。

東京五輪招致委員会は、開催による経済効果は3兆円と試算している。自治体は一定の経済効果を期待する一方、誘致が実現すれば、地元の青少年たちが選手との交流を通して、海外やスポーツへの関心を高める貴重な機会となるとみている。

典型的な例として、02年サッカー・ワールドカップのカメルーン代表が、当時の大分県中津江村をキャンプ地としたことが記憶に新しい。マスコミで話題を呼んだこともあって村に観光客が殺到し、一気に知名度が高まった。特産品は海外からも発注を受けるなど売り上げが大きく伸びた。カメルーン選手と子どもたちとの親善試合が実現、子どもたちにとっては貴重な経験になったはずだ。

選手や観光客にとっても、独自の文化や歴史を持つ地方都市の魅力を知る格好のチャンスにもなった。同様の効果を6年後の五輪でも望めるのではないだろうか。

東京五輪は開催目的の柱の一つに「東日本大震災からの復興」を掲げている。被災地の復興を力強くアピールし、海外に発信していく大きな一歩としたい。

宮城県は、宮城スタジアムがサッカーの試合会場となるため、海外から多くの観戦客が訪れるだろう。岩手県や福島県など被災各県と連携し、沿岸の津波被災地を巡る聖火リレーが検討されている。復興を伝えるイベントとして、ぜひ実現してもらいたい。

ただ、誘致活動は容易ではない。ハード面では、交通アクセスの整備に加え、宿泊・医療施設の確保など課題は多い。ソフト面では、海外の言語や習慣に配慮したサービスも不可欠だ。各国のチームのさまざまな要望に対し、どれだけ対応できるかが鍵を握っている。

何よりも、地域住民が誘致に賛同し、理解してくれることが大前提になる。そうでなければ、ボランティアなどの協力を得られない。地域の特色を生かした取り組みを期待したい。

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