e働き手の理解得て結論を

  • 2014.01.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年1月7日(火)付



労働者派遣の見直し
キャリア形成につながる制度に



厚生労働省の審議会で、労働者派遣制度の見直し論議が進められている。同省は今月中にも結論をまとめ、通常国会で労働者派遣法改正案として提出する方針だ。

現在、派遣労働者は約135万人に上る。女性や若者などが柔軟な就労機会として利用する一方、不本意ながら派遣で働かざるを得ない人も少なくない。多様な働き方のニーズに応えつつも、労働者を守る視点を堅持しながら議論をまとめてほしい。

厚労省の見直し案は、派遣先に対して賃金情報の提供など、正社員との均衡待遇を進めることを盛り込んでいる。悪質業者を排除するため、派遣事業を届け出制と許可制の併存する現行制度から許可制に一本化し、労働者への計画的な教育訓練も義務付けた。

派遣労働者の待遇改善やキャリア形成を重視する姿勢が明確に打ち出されたことは一定の評価をしたい。

ただ、見直しの最大の焦点は、有期雇用の派遣労働者に任せる業務の範囲と期間だ。

現行制度は、企業の派遣受け入れ期間を通訳などの26業務を除き、一つの業務について原則1年(最長3年)に限っている。

見直し案では、企業は労働組合などの意見を聞くことを条件に、3年ごとに労働者を入れ替えれば、同じ業務を派遣労働者に任せ続けられるようにする。派遣会社には、3年間派遣した労働者について、派遣先企業に雇用を依頼することなどを義務付ける。時代の変化によって、専門性があいまいになった業務もあるため、無期限に派遣が認められていた26業務の区分も廃止する。

見直しの内容は、派遣制度を長期間活用したい企業にとって利点が大きい。派遣労働者も3年ごとに職場を替わり、就労経験を積むことなどで、キャリアアップや正社員化につなげることが期待できる。

一方、労働組合は「見直しにより、正社員が行っている業務が派遣労働者に取って代わられるのでは」と懸念している。正社員が派遣労働者に代替されることを防ぐ「常用代替の防止」の原則を崩してならないのは当然だ。

企業が労働組合の意見を聞くことが条件になっても、必ずしも発言力が強い組合ばかりではない。適正な手続きが確保されないと、なし崩し的に派遣労働が拡大することが危惧される。

政府は、無期雇用の派遣労働者の扱いを含め、労働者側の理解を得るための調整を最後まで続けてもらいたい。

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