e初の安全保障戦略

  • 2013.12.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月20日(金)付



平和国家の歩みを堅持
国際社会で信頼勝ち得る努力を



「平和国家としての歩みを引き続き堅持し」「国際社会の平和と安定、繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく」??公明党も了承し、17日に閣議決定された日本初の国家安全保障戦略(NSS)が掲げた基本理念である。

安全保障政策は一般に、外交政策と防衛政策を総合した国の基本政策として位置付けられる。基本政策を対外的に明示し、その理念に沿った外交を進めることが先進民主国の共通した政治姿勢である。それにより国家間の信頼感も醸成され、国際の平和と安全の基盤が構築される。

日本も同様に、これまで専守防衛に徹し、同時に国際平和協力に参加してきたことによって国際社会から得た「高い評価と尊敬」(NSS)を財産としながら、一方で、厳しさを増す安全保障環境に適切に対応することが期待される。

厳しさを増す安全保障環境の変化については、中国の動向に注意が向けられた。

NSSと同日に閣議決定された新・防衛計画の大綱が、島嶼防衛に関し、本格的な水陸両用作戦能力の新規整備を挙げたため、軍事的対応が目についた。

しかしNSSは、中国の透明性を欠く軍事力強化と、国際法秩序と相容れない独自の主張に基づく力による現状変更の試みに懸念を示しながらも、「わが国と中国との安定的な関係」をアジア太平洋地域の平和と安定に「不可欠の要素」と明記。その上で、日中の「戦略的互恵関係」の構築と強化に取り組む方針を示し、これまで通り、一衣帯水の隣国との友好関係重視の姿勢を変えていない。

NSSは専守防衛と並んで平和国家の象徴的な政策である武器輸出三原則等の見直しを明記した。

しかし、これは武器輸出を「慎む」とする三原則等の撤廃でも緩和でもない。すでに実施している同盟国・米国への技術供与など日本にとって必要不可欠な例外化措置に関して、新たな原則を定めることが目的であり、日本を武器輸出国に変える"基本政策の転換"ではない。

NSSは56年前に閣議決定された「国防の基本方針」に代わる文書である。半世紀続いた基本方針と違い、NSSは「おおむね10年」の期間を念頭に置いて策定された。

そのため、今後とも安全保障環境の変化を見据えながら必要な修正が行われる。その議論の土台をNSSは「国際協調主義に基づく積極的平和主義」とした。

この具体化を進める国家安全保障会議の責任は重い。

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