e個人保証のガイドライン

  • 2013.12.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月14日(土)付



企業を育成する融資に
貸し渋りの監視体制を強化せよ



銀行から融資を受ける中小企業経営者のうち、約8割は経営者(個人)保証を求められる。個人保証は経営者の個人財産によって、銀行から借りた資金の返済を保証することである。経営が傾くと、融資返済のために自宅などが差し押さえられ、生活が破綻する場合も少なくない。

多くの問題を抱える個人保証の在り方に対し、新たなガイドライン(指針)が決定した。その意義は、融資返済を個人財産に頼る金融業界の意識を大きく変えることだ。

特徴の一つが、融資の際に会社の資産や収益による返済が可能と金融機関が判断すれば、個人保証を取らなくてよい点。ただ、個人保証を設定しなければ、融資を受ける方法がない企業への配慮も必要である。経営基盤の弱い企業に個人保証を求める際は、保証の意味を金融機関がより丁寧に説明する責任を課した。

自公連立政権は6月に発表した「日本再興戦略」で、新指針の早期策定を明記。政府の動きを受け、日本商工会議所と全国銀行協会を中心に、関係省庁も加わった研究会が発足し、新たな指針策定に向けた議論を積み重ねてきた。

個人保証は精神的な負担も相当あり、世界的にも一目を置かれる日本の中小企業の技術力を生かした新事業の展開を阻む。公明党は今夏の参院選の重点政策で「個人保証の段階的廃止」を掲げた。中小企業の潜在力を引き出すきっかけとなる新指針を評価したい。

一方、新ガイドラインの設定で懸念されるのが、融資を拒否する「貸し渋り」だ。2008年のリーマン・ショック直後には、経営内容が全く問題ない中小企業でさえ貸し渋りに遭った。日本経済の成長には、中小企業の活性化が欠かせない。政府は貸し渋りや、貸しはがし行為を厳しく監視してほしい。

個人保証に頼らず、積極的に事業展開を支援する金融機関の役割は、日本経済全体にとっても重要である。そこで問われているのは、金融機関の目利きの強化だ。高い技術力と将来計画がありながら、経営実績の乏しさから資金繰りに苦しむ中小企業は少なくない。そうした企業を発掘し育成できれば、金融機関にとっても有益であるはずだ。

少子高齢化による国内市場の縮小に加え、グローバルな経済競争は激化する一方だ。中小企業と金融機関の双方が協力し、勝ち残るしかない時代である。今の日本経済は、利益拡大に努める絶好の機会を迎えている。民間部門の創意工夫に期待したい。

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