e若手人材が育つ環境に

  • 2013.12.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月5日(木)付



研究開発力強化法案
科学技術立国の構築へ成立急げ



自民、公明の与党両党が国会に提出した研究開発力強化法改正案が、3日の衆院本会議で可決、参院へ送付された。残り少ない会期だが、与野党の垣根を越えて最後まで法成立をめざしてほしい。

世界の研究開発競争は激しさを増している。人的基盤の整備に取り組む中国は、研究者数が世界1位だ。日本の総研究開発投資額は各国と比べて見劣りしないが、研究者数は過去10年間ほとんど変化していない。新たな人材を育成するための支援が、必ずしも十分でないのかもしれない。

日本は科学技術立国を掲げているが、国内での研究開発を避け、充実した研究環境が整う欧米に活路を求める日本人が少なくない。頭脳流出を止める必要がある。

研究開発は必要な予算の獲得が大切だ。獲得のための手続きは、複雑で面倒でもある。研究者が、本職以外の仕事に忙殺される現状を変えなければならない。改正案は研究者が本来の仕事に集中できる体制をめざす。例えば、予算確保に必要な手続きから特許など知的財産権の取得・活用まで研究を総合的に補佐する専門職の確立を明記した。

経済再生の切り札となるイノベーション(技術革新)は、人間の知恵と技術から生み出される。携帯電話の画面などに使うディスプレーは、日本人研究者らによる基礎研究の成果である。今や世界の人々の生活風景を一変させた。日本の強みである技術力の基盤を、さらに強固にしなければならない。

世界中が注目する研究開発の一つに、日本発のiPS細胞(人工多能性幹細胞)研究がある。安全性の確立など本格的な実用には、一定の時間が必要だ。

医療などの最先端研究では10年単位のプロジェクトが増えているが、労働契約法で有期労働の契約期間が5年であるために、事業途中で研究者の雇用契約切れを迎える事態が起きている。着実に成果を挙げるには、優秀で若い人材が継続して安定的に研究に専念できる雇用環境が欠かせない。

iPS細胞研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学教授が、若手研究者に対する安定した雇用環境の確立を政府に強く求めているのも、こうした背景がある。改正案は大学などが研究者と結ぶ有期雇用の契約期間について、特例として最長10年に延長することを盛り込んだ。

この法案を成立させ、国際競争力を強化しなければならない。

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