eQ&A特定秘密保護法案

  • 2013.12.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月1日(日)付



国と国民の安全確保に必要



国の安全と国民の生命・身体・財産を守るために必要な情報だけを特定秘密として指定し、それを政府内で管理・保護、活用するための特定秘密保護法案についてQ&Aでまとめ、併せて識者の見解を紹介します。

特定秘密とはどんな情報か 防衛、外交など4分野に限定
知る権利は守られるか 取材活動は処罰の対象外
秘密の範囲が際限ない? 行政は勝手に指定できない



Q なぜ、特定秘密保護法が必要なのか?


A 大量破壊兵器や国際テロ活動に適切に対処するためには、安全保障に関する重要な情報を入手し、その漏えいを防止し、国民の安全や国益を守ることは喫緊の課題です。

現在、国家公務員法や自衛隊法などにも秘密を漏えいした公務員等を処罰する規定はありますが、量刑が軽すぎたり、情報の対象が限定されており、わが国の安全保障に関する重要な情報の漏えいを防ぐ法整備は万全とは言えません。

情報管理が万全でなければ外国は重要な情報をわが国と共有しようとはしません。特定秘密を守るための法整備は国際標準となっているからです。



Q どのような情報が特定秘密として指定されるのか?


A 安全保障に関する情報のうち、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイ)防止(4)テロ防止―の4分野に限定されています。

原発事故の情報や放射能汚染情報(SPEEDI)などは特定秘密に当たりません。



Q 国民の「知る権利」「報道の自由」は本当に守られるか?


A 公明党の主張で、当初の政府案にはなかった国民の「知る権利」「報道の自由」を条文に明記させました。さらに報道機関の取材行為は「法令違反」や取材対象者の人格をじゅうりんするような「著しく不当な方法」に当たらない限り「正当業務行為」として処罰の対象とはならない旨も条文化しました。

加えて、修正協議の中で、特定秘密を「取得」する行為は、外国の利益を図るなどの目的(スパイ等の目的)がなければ処罰されないように修正し、通常の取材活動は処罰の対象とならないことを一層、明確にしました。



Q 特定秘密の範囲が際限なく広がらないか?


A 特定秘密を行政機関の長が勝手に指定することはできません。公明党の主張で、行政機関の長は、有識者会議の意見を聴いて首相が決定した統一基準にのっとり特定秘密を指定することにしました。

修正協議では、行政機関の長が実際に統一基準に従って指定・解除を行っているかを首相が確認し、改善の指示を出せるようにもしました。事前・事後のチェックを通じ、特定秘密の範囲が広がらないようにしました。



Q 現在も42万件の秘密があるそうだが。


A 現在、特別管理秘密として指定されている約42万件のうち、約9割が情報収集衛星から撮影した写真であり、次に多いのが外交・防衛等で用いられる暗号です。



Q 特定秘密の指定の有効期間の上限は原則30年から60年に後退したのか?


A 後退していません。当初の政府案では、通じて30年を超えて指定の有効期間を延長する場合に内閣の承認が必要となっていましたが、これに対し、内閣の承認さえあれば、半永久的に秘密にできてしまうとの批判がありました。

修正協議の結果、まず指定の有効期間は原則30年を超えることができないことを明確にしました。さらに、有効期間を延長できる情報についても、通じて60年を超えて延長することができないとしました。ただし、暗号や人的情報源に関する情報など、どうしても秘密にし続けないといけない7項目については例外としました。

指定の有効期間に明確な上限を設定したことにより、恣意的な延長はできないことになりました。

なお、秘密の有効期間について、米国では人的情報源等の情報に限って50年または75年、英国では公安関係等の情報は100年などとなっています。日本の有効期間の上限は国際的にも決して長くはありません。



Q 戦前の治安維持法のように国民の自由が侵されないか?


A そのようなことはあり得ません。戦前の治安維持法は、当時の国家体制に批判的な思想・信条に基づいた運動を処罰することを目的とした法律でした(1945年廃止)。特定秘密保護法案は公務員等による国家の安全保障上必要な情報の漏えいを防止し、国家の安全保障に資することを目的とするもので、全く異なります。

日本国憲法は思想・信条の自由を基本的人権として掲げており、侵してはならない国民の権利であると明確に規定しています。
識者はこう見る


「秘密の濫用」に歯止め
前田雅英・首都大学東京法科大学院教授

一、特定秘密保護法案は、世界の秘密保護の標準からいって、ごくごく常識的で、しかも秘密保護と「報道の自由」のバランスも非常によく取れている。

一、秘密が漏えいすることで国が傷つき、国民の生活が脅かされ不利益を被ることを軽視しすぎてはいけない。「特定秘密」を保護して国民の安全を守ることと、国民の「知る権利」「報道の自由」を守ることのバランスを取るためにどうするか。この法案は、恐らく考えられるぎりぎりの線になっている。政府の「秘密の濫用」ができないように歯止めをかけていると思う。(11月2日付「公明新聞」)

制度整備、十分に合理的
長谷部恭男・東京大学大学院教授

一、特別な保護に値する秘密を政府が保有している場合には、みだりに漏えい等が起こらないよう対処することには高度の緊要性が認められるし、それに必要な制度を整備することも十分に合理的なことであり得る。

一、(どのような情報が特定秘密なのか、よく分からないとの批判について)人はおよそ全知全能ではないので、何が特別な保護に値する秘密なのか、あらかじめ隅々まで確定するのは不可能。その答えは、具体的な事例ごと、専門知識を持つ各部署で判断し、個別に指定していくしかない。(11月13日の衆院国家安全保障特委での意見陳述)

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