e奨学金が返せない...

  • 2013.09.23
  • エンターテイメント/情報
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公明新聞:2013年9月23日(月)付



33.4万人延滞、総額925億円 
主因は不景気による収入減か



不景気や就職難によって収入が減少し、奨学金を返せずにいる人が年々、増加傾向にある【グラフ参照】。若者の未来を切り開くはずの奨学金が人生に重くのしかかっている現実。こうした状況を踏まえ、公明党は無利子奨学金の拡充や奨学金延滞金利の引き下げなどに取り組んでいる。

公明の主張で無利子枠拡大や金利引下げを概算要求に計上

こんなはずじゃなかった......。都内に住むKさん(29)は、奨学金の返済を猶予してもらうための書類を記入しながら、過去を振り返っていた。

希望に胸を躍らせ入学した大学。勉学に励み、ゼミやサークルではリーダーとして皆をまとめる存在だった。多忙な日々にアルバイトをする時間は限られたが、「親には甘えられない」と実家からの仕送りは求めなかった。自然、奨学金を頼りにして生活を送った。

卒業を控えた大学4年生の時、内々定をもらった企業に就職するか、大学院に進むかの選択を迫られた。進学を選べば、さらに奨学金を借りなければならない。悩んだ末、周囲からの期待もあり大学院へ進学することに。「これが分かれ道だったかもしれない」と、Kさんがつぶやく。

大学院のハードな勉強と積み重なる奨学金の重圧。ふと嫌な想像に駆られた。「大学院を出て仕事に就けなかったら、奨学金の返済責任だけが残る」。今まで借りた金額をざっと計算すると、総額1500万円。目の前が真っ暗になり、ここから心身の疲弊が一気に加速、1カ月の入院を余儀なくされた。

この遅れを取り戻せず、Kさんは大学院を中退。何とか企業就職したが、過酷なノルマと膨大な残業で昼夜を問わず酷使する「ブラック企業」だったため、すぐに退職した。「奨学金は何とか返済しないとまずいと思っている。でも、結婚とか親の心配とか、焦ることが多くてなかなかうまくいかない」。Kさんは現在も就職活動を続けている。

日本学生支援機構によると、2012年度末現在、奨学金の要返済者約323万人のうち、33万4000人が返済を延滞しており、総額は925億円に上る。同機構が11年度に行った調査では、延滞者の約46%が非正規雇用と無職。年収は300万円未満が83.4%を占め、延滞理由は「収入が減った」が75.3%だった。

こうした状況を踏まえ公明党は、今年行われた参院選の重点政策で無利子奨学金の拡充や奨学金延滞金利の引き下げなどを主張。

5月には、党学生局が学生3610人への調査を基にした提言を下村博文文部科学相に提出し、奨学金制度の拡充を強く求めていた。

その結果、文部科学省の来年度予算概算要求では、奨学金の延滞金利を現行の10%から5%に引き下げたり、経済苦などで返済を猶予する期間を5年から10年に延ばす措置や、無利子奨学金枠を7万人増やす事業が盛り込まれた。

このほか同省では、本人の年収が300万円を上回るまで返還期限を猶予する所得連動型奨学金の対象を拡大する準備を進めている。

ただ、Kさんの例を見ても分かるとおり、奨学金延滞の背景には、不景気による就職難やブラック企業の存在もある。今後も公明党は、返済の必要がない給付型奨学金の導入や就労支援強化など、若者施策の充実に力を尽くしていく。

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