e新型ロケット打ち上げ

  • 2013.08.16
  • 情勢/テクノロジー

公明新聞:2013年8月16日(金)付

 

 

コスト半減し競争力強化
中小企業の技術力生かす好機に

 

今月27日に、人工衛星を載せた国産の新型ロケット「イプシロン」初号機が打ち上げられる予定だ。日本が独自に開発してきた固体燃料ロケットで、効率性と低コスト化を追求した。

わずか2台のパソコンと数人の管制員による「モバイル管制」で打ち上げることができ、打ち上げ費用は従来の半分以下の約38億円といわれる。「アポロ時代から変わらない重厚長大な打ち上げに代わり、シンプルなイプシロン方式がいずれは世界標準になる」(宇宙航空研究開発機構=JAXAの森田泰弘教授)と、世界をリードする可能性を持った"自信作"である。成功に大きな期待が掛かる。

宇宙産業の国際市場規模は2012年で約18.5兆円に上り、年平均10%超の勢いで成長している。人工衛星を利用する通信事業などの関連産業を含めれば500兆円規模の市場となる。

成長著しい宇宙関連市場だが、日本の存在感は大きくない。ネックとなっているのが、先行する欧米諸国に比べて割高な打ち上げ費用だ。この弱点を克服するため、政府が担ってきたロケットの打ち上げ事業の民間移管が進められてきた。

民間に移管すれば、衛星の開発・製造から打ち上げまでを一貫したサービスとしてビジネス展開できるようになる。コスト削減と効率化が期待できる。

今月4日には、民間移管後初となったH2Bロケットの打ち上げに成功した。H2Bは、07年から民間で打ち上げてきたH2Aの2倍の容量を持つ。国際市場で大きなシェアを占めるロシアや欧州諸国にも対抗できるロケットだ。

打ち上げの成功が続いていることは、コスト削減と信頼性向上が両立している証しでもある。

政府もH2Aの後継機となるH3の開発に乗り出す予定である。H3は打ち上げ費用の半減をめざした機体であり、完成すれば国際市場での日本の競争力は、先行する海外諸国にも劣らない。

人工衛星やロケット打ち上げの海外受注の獲得が広がれば、高い技術力を誇る日本の中小企業や、新サービスの開発に取り組むベンチャー企業などの活性化にもつながっていく。

そのためには、民間主導で宇宙ビジネスができる環境の整備が欠かせない。

政府は6月に策定した成長戦略で、宇宙関連分野などへの中小企業の参入障壁の克服などを盛り込んでいる。具体化を急いでもらいたい。

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