t久米島の取り組み

2016年7月22日



沖縄県久米島は、本島の那覇市から西方に約100㎞、人口8,300人の小さな島です。2040年には「消滅可能性」があると色分けされたこの島で、地方創生のモデルケースを見ました。
 産業や雇用のカギとして取り組みを進めているのが、「海洋深層水」プロジェクト。大洋の深海を数千年の時間をかけてゆっくりと循環している「海洋深層水」は、汚染や病原菌が極めて少なく、またミネラルが豊富で、低温で安定しています。久米島では、その「海洋深層水」を深海600mからくみ上げて、様々な分野で新たな挑戦をしています。
 久米島で養殖した車エビは全国最大のシェアを誇りますが、母エビがウィルス感染していたことで、全滅したこともあります。常に、そうしたリスクと隣り合わせですが、これを「海洋深層水」で育てることにより、ウィルスフリーの車エビとなります。通常のものよりも、「活きが良く長持ちする」そうです。カキの陸上養殖にも取り組んでいました。来年以降、「あたらないカキ」が実現するそうです。試食させて頂いた、沖縄特産の「うみぶどう」も、大粒でぷりぷりで、最高に美味でした。「海洋深層水」をつかったミネラルたっぷりの化粧品も、久米島の経済に大きく貢献しています。
 こうした新たな農水産業に加えて、エネルギーへの活用を目指す研究開発も進んでいます。熱帯の表層海水と、海底で冷えた深層水の温度差を利用した「海洋温度差発電」は、佐賀大学と共同で研究開発がすすめられています。将来的には、100メガワットの発電が可能になれば、コストも原発並みのキロワット当たり10円に抑えられると予想しています。
 「海洋深層水」の取り組みは、国家の安全保障へも、大きく貢献しています。日本の最南端の沖ノ鳥島は、その周りに日本の国土面積を上回る40万平方キロの排他的経済水域を有しており、国土保全上、きわめて重要な島です。島はサンゴでできているため、風化と海食におかされつつあります。政府は、護岸工事などでコンクリートで島を囲み、消滅から守ろうとしています。ここ久米島では、サンゴの増殖によって、沖ノ鳥島を守る取り組みを進めています。既にこの10年で、約10万株のサンゴを移植したとのことでした。
 このほか、教育分野でも、島ぐるみの取り組みが注目されています。生徒数が減り続ける高校を地域で応援し、いまや沖縄本島や、東京や神奈川など本土からも生徒を受け入れる、元気な高校になりました。

 地方創生は、行政だけ、あるいは議会だけでできるものではありません。地域の企業、教育機関、そしてなによりも住民の積極的な取り組みがあってこそ、前に進むことができると思います。この小さな島の資源を最大限に活用し、知恵と情熱と団結で頑張る久米島の、素晴らしい取り組みを目の当たりにし、非常に勉強になりました。

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