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t良書との出会い⑥ 『国家は破綻する 金融危機の800年』

2015年1月1日



『国家は破綻する 金融危機の800年』カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ著 村井章子訳


白組、おめでとうございます!いろいろあった一年間、皆様にとって、来年が更に大躍進の一年となることを、お祈り申しあげます!


さて、長らく書けなかった「良書との出会い」ですが、今回は大著に挑戦しました。『国家は破綻する』という、なんとも悲観的なタイトルです。本書は、金融800年の歴史を、とにかくデータ重視で、客観的に分析している大著です。厚さ5センチ、4000円もするため、買うのにかなり躊躇しましたが、教科書として書棚にずっと置いておいても良いかと思って、ネットで意を決して購入を「クリック」しました。


内容は、納得の一冊でした。66か国、800年の各国の金融危機のデータを集めて比較。その一番の主題は、原題「This time is different」、つまりどの国も、金融危機の兆候が見えてきたとしても、「今回はちがう」と思い込んでしまう、その傲慢さが、危機を増幅させてきたというものです。


たとえば、米国では、ITが生産性を劇的に向上させた。だから、「株価収益率が過去の水準を大幅に上回っていてもおかしくはない。今回はちがう。」しかしこの幻想は、2001年のITバブルの崩壊で、打ち砕かれてしまいました。こうした教訓も冷めやらぬまま、リーマンショックが訪れます。世界で最も信頼できる金融規制、金融システム、そして世界最大の規模と流動性を誇る資本市場が、米国にはある。だから、大量の経常赤字があっても、大量の資本が流入しても耐えられる。IMF自体が、「今回はちがう」と誤った判を押してしまいました。しかしその結果は、1930年代の大恐慌以来の、第二次大収縮を世界に引き起こしてしまいました。毎回、同じ間違いを繰り返しているんです。「This time is different.」と。章末には、ローズ・ベルタンの言葉が引かれています。「この世の中に新しいものなど存在しない。新しくみえるのは、忘れていたからだ。」


興味深いのは、先進国は、確かに公的債務のデフォルトや、年率20%以上の高インフレからは卒業しました。データをみても、それは明らかです。しかし、同時にデータが示しているのは、結局、銀行危機、金融危機は、富裕国か貧困国かにかかわらず、歴史上、同様の発生率、頻度で襲ってくるということです。先進国だから、大丈夫と言うことは決してないのです。むしろ、金融センターになればなるほど、そのリスクは高まるのが、歴史上の事実です。しかし、「まさか、我が国は大丈夫。今回はちがう。」という思い込みこそが、対処を遅らせ、国家を危機に瀕する原因となるというのです。


日本のこれからを考えるのに、非常に参考になった一冊でした。4000円分回収するために、今後も何度も読み返したいと思います。みなさん、良いお年を!

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